書店をたずねて三千里

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飯田橋の桜が満開。そして書店がまた消えていく…

今年も飯田橋の桜は満開です。

JR飯田橋西口を出て目の前にひろがる景色は、私もかれこれ14年、毎年見ている景色ですが、まるで天国か天竺か!というぐらい美しく、お堀沿いに咲き誇る桜の美しさに、日々の苦悩が洗い流される思いでした…(何をそんなに悩んでいるのか…)。

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そんな飯田橋ですが、私がこの飯田橋にある出版社の彩流社で働き始めた2000年には、書店がいくつもありました(2014年4月7日現在は、たったの芳進堂書店の1軒)。

その中のひとつ、飯田橋にもかつて支店があった文鳥堂書店さんの本店さんが、飯田橋の隣駅の神楽坂の駅近くにあるのですが、ついにこの最後の一店舗(以前は、原宿、四ツ谷、飯田橋、赤坂、新橋、世田谷に支店があった)が先週の土曜日に閉店してしまいました。

飯田橋には、かつて芳進堂書店の他に、文鳥堂書店、飯田橋書店、松田屋、文悠(神楽坂の入口近くの坂の途中にも一軒あったと記憶しています)、ミステリー専門店のブックスサカイ深夜プラス1、乗り物書籍の専門店、のりもの倶楽部(経営しているイカロス出版のビルがある市ヶ谷に移転)等々、新刊書店、専門書店と、様々な本屋がありました。

その中でも文鳥堂書店は異彩を放っていました。
一番記憶に残っているのは、レジでかけてくれる文鳥堂書店オリジナル(?)のカバーと、そのカバーの「かけかた」でした。
通常、多くの書店では、カバーをあらかじめ文庫、四六判、A5判という風にそれぞれの本の大きさ(判型)に折って、レジの下にためておくの一般的だと思います。
そういうふうに、ためとかないと、レジにお客さんが並んだ時とか、いちいちその都度、お客さんが買いに来るたびにカバー折ってかけていたのでは、時間がかかってしまい、お客さんを待たせてしまう恐れがあるからです。

でも文鳥堂書店は違っていたんですね。

初めて文鳥堂書店で本を買った時は本当に驚きました。元書店員だった私がかつて働いた丸善でも文教堂書店でも宮脇書店でも、あらかじめカバーは折ってためてありましたし、丸善にいたっては、それぞれの大きさのカバーがすでに糊付けされて完成したものがあったぐらいです。書店の業務は、普通そういうものだと思っていたからです。

文鳥堂書店のレジに本を持っていくと、「よく味はふ者の血とならん」という武者小路実篤の言葉に野菜のイラストが描かれた、とても味のあるカバーを、店員が私の目の前で、その本の判型に合わせて綺麗に折っていきます。そして、その次の段取りが本当に見事!というか職人芸でした。なんと、カバーの紙の一部分に切り込みを入れ、とてもその本の判型にフィットした、綺麗に装着できるカバーをかけてくれたからです。しかもこの一連の動作がとても速くて無駄のない動きでした。音で表現すると「スッ!スッ! ピッ!ピッ! シャッ!シャッ!」といった感じでした。

この職人技を、どこかの書店に伝承してほしかったような気がしますが(もしかしたら、どこかの書店に伝承されているかもしれませんが…)、文鳥堂書店のような、不器用だけど職人のいる書店に…残ってほしかった…残念です。

【文責 春日俊一】