書店をたずねて三千里

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出版営業のマナーについて

先日、出版業界紙の『新文化』の一面で『40書店に「読者・出版社のマナー違反」調査』という記事が掲載されて、そのなかで「出版営業のマナーも問題」というような記事も掲載されていて、その理由に「電話での(長時間の)商品案内」「(繁忙時間の)アポなし訪問、長時間営業」「レジに客の列ができていても話をやめない」等々が書店員へのアンケートからあげられていて、ちょっと考えさせられた。書店さんが言っていることは間違ってはいないと思うし、本音だから、そういうことであると思うが、これは仕方がない面があると思う。というのは、私は昔書店員を三つの書店で計7年ほど働いていて、その後14年版元で働いてみて、両方を経験したので分かったことだ(なので両方を経験しないとなかなか書店員に理解してもらえないかもしれないが…)。
「電話での(長時間の)商品案内」については、とにかく「長時間」やるのは避けなくてはならないが、書店員時代の私の当時の対応を思い出すと、忙しい時間にいきなり電話してきて、口頭で商品説明されても、著者が有名だったりしなければイメージしずらいし、相手の態度によっては、電話で簡単に注文取って営業コスト下げようとするのが見えて腹が立ったこともあって、あまり良い印象がなくて、基本的にお断りしていたように思う。ただ、よく知っている営業マンから「どうしても時間が取れなくて刊行までに訪問できそうにないので」と言われれば、ちゃんと聞いて注文を出していたように思う。そして、版元になった今では、全国に無数にある書店を数名の営業マンで、すべて訪問営業することは不可能で、地方書店となると出張費用もかかるので、年一回行けるか行けないか、というのが現実だということだ。不可能なものは不可能と、書店員の方々にも理解してもらうしかない。いずれにせよ、書店員に嫌がられては営業にならないので、電話営業も書店員に迷惑にならないように気を付けて、少しは最低でも数冊実売をあげられるような本を提案営業できるようにしないといけないと思う。
「アポなし訪問」については、書店員時代も「それはいたしかたない」と理解していた。
なぜ仕方がないかというと想像すればすぐに分かることで、例えば、営業に出るその日に行ける範囲の書店の担当者に、アポを全部取ることは、相手の書店員が休憩中のこともあるし、接客中で電話に出れないこともあるのだから、そもそも不可能だし、たとえもしアポが取れたとしても、例えばもし一軒目の書店で話が長引いたり、話し好きな店長に捕まって一時間ぐらい時間を使ってしまって、二軒目、三軒目のアポを取って約束した時間に間に合わなくなったり、最悪、時間が押しまくって遅い後ろの方の時間にアポを取った書店をその日に訪問できなくなる恐れがある(地方出張の時などは、移動の時間が正確に計りにくく、現地の交通に慣れていなくて、予定通りに訪問できないことはよくある)。そうなったら「アポなし訪問」どころのレベルでは無く「ドタキャン」なんで、相手の書店員の印象最悪に落ちるだろう。まあ午前に一軒、午後に一軒アポを入れるレベルなら問題ないと思うけど、現実的にはその程度で、その日にアポなし訪問することになる書店にとっては、何も変わらず、「アポなし訪問」でしかない。あと過去に何度もあったが、アポを入れて、ていうかその日は店長から頼まれた案件でアポを入れて約束の時間通りに訪問しても、30分以上待たされたことはざらにあった。ただ別にそのことを怒ったりはしなかった。想像すれば分かることで、書店は接客業だから、突然のクレーム、お客様の案内等々突発的に起こる仕事がたくさんあって、急に手が離せなくなることがあるからだ。だからお互い様ということで、分かっている書店員はアポなし訪問なんて特に気にしていない(ただ時間帯やお客様の混み具合は気にして訪問するのは当然のことである。開店直後とか、レジ締め中とか、クリスマスの時期とか、付録付き雑誌が大量に入荷した日とか、品出しがたくさんある日の午前中とか)。かといって突然の訪問営業ということには変わりはないので、いつも「お忙しいところすみません…」と、遠慮がちに恐縮して営業先の書店員に声をかけることにしている。仕事の途中で突然割って入って、強制的に相手の仕事を中断させることに違いはないからだ。

ということで、たぶん私が思うマナーが悪い営業マンというのは、訪問営業だろうが、電話営業だろうが、そういうことも全く気にせず、自分の都合しか考えていなくて、しかもちょっと上から目線で、「なんで注文しないの、商品知識も無い、たいしてモノを知らない書店員なんじゃね」的な本心が(口で言わなくても人間、態度、表情、区長で分かる)見え見えの営業マンのことだと思う。
これも書店員時代に何度かその手の営業マンから営業されたことがあるので、実体験としてそう思う。
この手の営業マンは、レジにお客様が並んでいても、後ろに順番待ちしている他の営業マンが待っていても全く気にしないで自社商品の説明というか、目先の自分の営業成績を上げることしか考えていない。商品説明は長いし、その書店の立地とかも全然考えないで、ただひたすら営業トークを続ける。そんな営業からは、言われれば言われるほど注文を出したくなくなることもある。出しても入荷してそれが売れないと、なんか騙されたような気がするものだ。

まあでもこの手の営業マンは、だんだん書店員から敬遠されて結果的に成績が伸びなくなるので、徐々にモチベーションも下がって、数年で辞めて消えていく。

長続きしていて、書店員から信頼されている営業マンは、礼儀正しいのは基本だが、どっちかというと内向的で気弱なタイプで、だけど内に本と書店への愛情とそこで働く書店員への敬意を強く秘めているタイプだと思う。言葉がうまくなくても、この手の営業マンからでる空気自体に信頼感があって、適正な注文を出せると思うし、商品説明もリアリティがあるからだ。

なんか今回は偉そうに書いてしまったが、気がつけば書店員時代と版元営業時代を合わせると20年以上経ってしまって、何千人という業界人を見聞きしてきたので、これぐらいのことは書いても、それほど的外れではないと思うし、いいんじゃないでしょうか…。

とはいえ、業界に何十年いようが、いくつになろうが、常に謙虚で、20歳歳下の書店員にも敬意をもって接することができる営業マンでいたいと自分に言い聞かせつつ、愛する本と書店と書店員にこれからもたくさん出会っていきたいと願う、42歳ヘルニア持ち版元営業マンのつぶやきでした。

【文責 春日俊一】