書店をたずねて三千里

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本と出合う(その1)

昔、私が書店で働いていた頃の話ですが、その某チェーン店には、「特選図書」という出版社から返品無しの買切りで仕入れ、その代わり正味(仕入の掛け率)が高い商品が時々入荷することがありました。

この「特選図書」、名前こそいいのですが、基本的に書店に入荷する本は、一部の買切りのみの出版社(返品を受け付けない出版社)を除いて、一定期間(版元によっては無期限)の間店頭に並べ、売れなければ返品をすることができる「委託商品」がほとんどなので、買切りのこの「特選図書」は意地でも売らないといけない、正味も高いし、なんとか売りたい、ということで、とてもプレッシャーを感じつつ販売していた記憶があります。

その頃、まだ駆け出しのペーペーの書店員だった私は、どうやったら売り切ることができるのかを、この買切り商品の「特選図書」を売る時に、初めて真剣に考え始めました(まあ本当は全ての本について真剣に考えないといけないのですが、小さい書店でも店頭には数万冊の本があるので、すべての商品に気を配るのは不可能です)。

ということでいろいろと試したみました。

新刊台の近くの平台に置いてみる→でもなぜか売れない。
売れ筋の本の隣に置いてみる→でもなぜか売れない。
POPを付ける→それでも売れない。

ということで、どうやっても売れないなあ、なんでだろう? と、悩んでいたところ、最後の陳列した、店の後ろの入口入ってすぐの趣味系の雑誌の近くの特設台に置いてみたら、急に売れ始め一週間で2冊ほど売れた、という出来事がありました。

そのやっと売れた本の内容なんですが、30歳代の男性が読むような内容だったので、趣味系の雑誌を見る目的で入口から入ってきて、雑誌だけ見て帰ることが多いお客さんが、近くの特設台にあった、その本がたまたま目に入って買っていった。たぶんそうなんじゃないかな?と自分では当時思ったわけです(その本を買った2人のお客さんに直接確認したわけではないので確信はもてませんが…)。

本は書店の平台であっても、陳列する場所で、その本に出会うべき(かどうかは分かりません)人に見つけてもらえない。
まあ書店員として当たり前のことかもしれませんが、この時の経験は今でもよく覚えています。

今の私は出版社の営業マンなので、今度は書店さんに、営業をかける本がどこで売れるのかを提案できなければいけない立場になりました。
日々営業トークの内容、提案する棚の場所について、考え悩むることばかりですが、うまくいって売れた時は本当に嬉しいものです。

【文責 春日俊一】