書店をたずねて三千里

最新の記事5件

このコーナー内を検索

月別一覧

営業部便り・2002.3 『本は売れているか?』

私は子供の頃、近所にある三軒の書店をよく梯子して暇を潰していた。特に買いたい本がない時でも書店に入り、何か新しい発見はないか、興味をそそられる物はないか探していた。好奇心を刺激してくれるものがあれば、そろそろ飽きはじめている今の遊びを止めて新しい遊びができる、そんなふうに思っていたような気もする。小学生だった私がそうであったのなら今の子供もそう思っている奴は結構いるはずじゃないかとも思う。そうだ書店は夢の宝庫だったのだ!小学生の頃私は天文学者になりたかった。読めない漢字がたくさんある天文関係の本を辞書を引きながら読んだものだ。ある程度理解できれば子供の私には満足だった。
やはり書店は雑多な世界が並び、くだらない本から小難しい本、子供が欲しい本、大人が欲しい本、男が欲しい本、女が欲しい本、なんでもあるべきだろう。前振りが長くなってしまったが、ようするに私が言いたいのは最近よく耳にする「活字離れが進んでいる」「今や世間一般の人の興味は携帯電話やTVゲームに向いている」という類の話、「あれは嘘だ!」「違うだろ!!」と言いたいのである。携帯電話で友達や恋人と楽しい話をするためには、それなりに雑誌を読んで情報を仕入れたり、小説を読んで何か違う言葉使いをしたくなったりするから、また楽しいはずで、TVゲームを作るためには相当の想像力が必要だろう。想像力を養うには本で活字を読むのが一番だ。
そして出版営業マンは売上をあげることだけに喜びを感じているわけではないのである。本と人の出会いを演出できた時にまた違う喜びを感じることがある。以前小社から1万五千円もする『鬼の大事典』という本が発売されることになり、いざ書店に営業に向かったわけであるが、大型書店でもこの不況下、高額商品は敬遠されがちで1冊縲怩Q冊しか受注できないところ、都心からすこし離れた60坪ほどのあまり大きいとは言えない書店で1冊だけ置いていただけることになった。販促用のパンフレットも店の入り口のラックに置いてもらい。内心は売れるかどうか自信はないがとりあえず試す価値はあるだろうという気持ちで、売れることを祈りつつ発売を待ったのであった。『鬼の大事典』は発売後、神保町の老舗の本店や最近増えてきた500坪クラスの大型書店などで一冊づつ売れ始めた。新宿の老舗の本店でも一冊売れた。そしてなんとあの60坪の書店からも発売後一週間で『鬼の大事典』の追加注文が入ったのである。その書店の店長に詳しい話を聞いたら「その買っていかれたお客さんは、あなたが置いていった『鬼の大事典』のパンフレットを見て、発売を心待ちにしていたそうで。買っていく時に『こういう本を探していたんだよね』と言っていたよ」とのこと。私は本当にこの書店に営業して良かったと心から思った。
本屋は大きさだけが勝負ではない、そこに出入りする本を愛する人々が何を求めているか知っているかいないのかが大事だとその書店の店長に身をもって教えてもらったような気がします。
買っていただいたお客様にも心から感謝いたします。本はまだまだ売れている。

(筆・春日)