歩く民主主義

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歩く民主主義 最終回

2020 年 3 月 19 日 木曜日

最終回 神さまからの贈り物

村上稔

 

コロナウイルスのせいで私が副業で経営しているゲストハウスもキャンセルが相次ぎ、これ以上長引けばいよいよ何らかの決断もあり得る事態に追い込まれてきた。

甲子園が中止になったが、球児たちもかわいそうだけれども周辺の旅館などは泣きっ面に蜂だろう。宿泊業は一年の売上の波が大きく、稼ぐ時に稼いでその収入で後を回しているような所があるので、農家でいうと畑の作物が全滅したみたいなものだ。蓄えのない所は閉めるしかなくなる。飲食業なども同様だろう。いや、というかほぼ全ての仕事に深刻な影響を及ぼしているのが今回のコロナ騒ぎである。 (続きを読む…)

歩く民主主義 第9回

2020 年 2 月 20 日 木曜日

第9回 オールドスタイル、ニュースタイル 〜奄美大島を歩く〜

村上稔

 

仕事を絡めて奄美大島へ行ってきた。飛行機は関空から初体験のL C C、ピーチである。関空第2ターミナルの国内線は拍子抜けするほど簡素な建物でガランとしていてピーチの搭乗カウンターだけがある。L C Cの特徴は、持ち込み荷物の大きさや重さが制限されていて預けると別料金がかかるという点だが、そのために私のようなケチな人間は料金内にしようと努力をするので、結果的に軽くて小さなものに収まって悪くない。

機内は大手航空会社に比べてシンプルだ。座席の手すりにはゴチャゴチャといろんなものが付いてない。モニターもなくて非常時の脱出をどう説明するのだろうと思っていたら、キャビンアテンダントさんが通路に立って昔ながらのデモンストレーションをしてくれた。そうか、ちょっと前まではこれだったのだ。 (続きを読む…)

歩く民主主義 第8回

2020 年 1 月 16 日 木曜日

第8回 世の中すべてカネか?

村上稔

 

ちょっと何かを勉強し始めると、自分は歳だけ食って何も知らないなあ、といつも反省させられるのである。

なんでトランプみたいなヤバそうな人間が大統領になれるのか不思議でたまらなかったが「お金」について少し勉強すると見えてくるものがある。お金をものさしにして考えるとこの世はもっと単純、というか複雑? ……一体どっちやねん? という感じだが、要するにこれまでと違った見え方がしてくる。

そのトランプの友達のロバートキヨサキが書いたベストセラー『金持ち父さん貧乏父さん』を遅ればせながら読んだ。

中身は、要するにこの資本主義の世の中ではみんなが「ラットレース」を強いられている、そこを抜け出して自由になりたいと思ったら「ビジネスオーナー」か「投資家」になるしか方法はないよというものだ。 (続きを読む…)

歩く民主主義 第7回

2019 年 12 月 16 日 月曜日

第7回 矢沢永吉ビジネス論  後編

村上稔

 

永ちゃんは金を稼ぐのが天才的にうまい。

僕も小さな会社を経営しているので多少はビジネス書なども読むのだが、永ちゃんのやり方はビジネスの教科書に載ってもいいほど理論に適っている。

まずはブランド作り。商品の中身と世間的なイメージは商売の成否を左右するが、永ちゃんはこれを手抜きなしで徹底的に高めている。そして全てにおいて一石二鳥、三鳥を狙っている。

もちろん永ちゃんのコアにあるのは「良い音楽を作る才能」だ。僕は中三の時に『ルイジアンナ』のギャッギャ〜ンというイントロに出会って以来、30年以上も永ちゃん音楽に引き込まれている。しかし永ちゃんはその自分の才能をプロデュースするのも天才だった。

先のNHKのドキュメンタリーもそうだが、番組の中では永ちゃんの徹底的にストイックな音作りが強調されている。まずは「一人でロスのスタジオにやってきた」というところからシビれさせ、ドラムの一つの音、ギターの一つのフレーズを、一流の凄腕ミュージシャンたちに指示を出して、これでもかと作り込んでいく様子をカメラが追う。そして休日には仲間たちとリラックスしてハーレーを飛ばす姿が映され、そのカッコ良さに僕たちは酔う。 (続きを読む…)

歩く民主主義 第6回

2019 年 11 月 15 日 金曜日

第6回 矢沢永吉ビジネス論  前編

村上稔

 

永ちゃんが好きだ。

中三の時にキャロルの音楽に出会って「ファンキーモンキーベイビー」や「ルイジアナ」に衝撃を受けた。家が金持ちの友達にベースギターを借りてバンドをはじめ、高校生になって学園祭で演奏した。めちゃくちゃ下手くそだったと思うけど、五十三歳になった今でも時々ステージに立つ夢を見る。たいていは、全く練習をしていないのイントロが始まって「ヤバい」と焦っている悪夢なのだが、時々はカッコいいステージアクションで女子生徒にキャアキャア叫ばれたりしている。ほとんどトラウマと言えなくもないが、僕の人生にとって、よほどインパクトのある経験だったのだろうと思う。なので永ちゃんこと矢沢永吉の存在は、中三の時以来、僕の中でずっしりと居座っているのである。

高校を卒業したくらいからはあまり永ちゃんを聴かなくなった。ローリングストーンズとか、邦楽でももっとワイルドな感じのロックとか、ボブマーリーとか、カリブ系のエスニック音楽とかが好きになり、永ちゃんは何となく演歌っぽくてカッコ悪い気がして遠ざかっていた。

それでも時々……十年に一回ぐらい無性に聴きたくなることがあってCDを借りたりしていた。歳をとってきたせいかもしれない。銭湯のサウナで流れている演歌の歌詞が妙に身に染みたりする今日この頃、またもや七年ぶりに出た永ちゃんの新譜を買ってハマっているのである(そう言えばCD自体、この前はいつ買ったか忘れてしまうぐらい買ってない)。 (続きを読む…)

歩く民主主義 第5回

2019 年 10 月 18 日 金曜日

第5回 田舎は都市の社畜牧場か

村上稔

 

キツいタイトルを思いついて自分でげんなりしてしまうのだが、このところのいろいろを考えると思わずこんな風に言ってしまいたくなるのである。

僕が住んでいる徳島県の人口は、小・中学生の頃は86万人と教わっていたのだが、現在は73万人。30年ほどで13万人も減ってしまった。

毎年の減少数は7千人。人口73万人中の7千人だから、毎年、町が丸ごと一つ無くなってしまうぐらいの衝撃なのである。

 

数日前の徳島新聞のトップニュースは「そごう徳島店閉店へ」。日本百貨店協会によると、徳島は「全国で唯一百貨店のない都道府県」になるらしい。

県外から初めて徳島に来るお客さんを案内すると、皆さんまるで何も無い田舎を想像してくるらしいのだが、駅前にそびえるそごうを見て一様に「思ったよりマチだね」と言ってくれて、それがちょっぴり誇らしい徳島県民だったのだが、その拠り所もついに失うことになってしまった。

服を買う場所としては巨大モールが数カ所ある。しかしこの巨大モールというのはその実、田舎の象徴だ。 (続きを読む…)

歩く民主主義 第4回

2019 年 9 月 15 日 日曜日

古い人たちにはうんざりだ

村上稔

 

嫌韓とか反日とか、ホントつまらない。なぜつまらないかと言う理由をいくつか挙げてみたいと思う。

まず一つ。うちの会社は移動スーパーの運営の他に、徳島県鳴門市の大毛島に「うずしおゲストハウス」という旅宿を経営している。大毛島は去年の紅白歌合戦で米津玄師が中継をして話題になった大塚国際美術館や鳴門の渦潮で有名な観光地なのであるが、うちの宿には連日、世界中から旅人がやってくる。ヨーロッパ、アジア、アメリカ、オセアニア……いろんな国の人たちが集まって、共有スペースは夜な夜なインターナショナルに盛り上がっているのだ。

先日も、夏休みを利用して青春18切符で旅をしている17歳の悩める日本男子高校生が、韓国人のカッコいいお兄さんに英語の単語を並べて人生相談をしていた。

高校生曰く「学校や親から進路の決断を迫られているが、やりたいことがわからない」とのこと。そこで韓国兄さん「ハウオールドアーユー?」。高校生「セブンティーン」。すると韓国兄さん、ニコッと笑って「セブンティーン、ノープラン、オーケー!」と一言。

で、それまでの高校生の深刻な顔がキョトンとしたと思ったら笑顔になった。「ノープラン、オッケー?」「オーケーオーケー! セブンティーン、ノープランオーケー!」二人して声を上げて笑っている。

宿業冥利に尽きるとっても幸せな瞬間だ。私はその高校生の解放されたような弾けた笑顔を見て、彼の旅の成功を確信した。 (続きを読む…)

歩く民主主義 第3回

2019 年 8 月 19 日 月曜日

第3回 N国党のやり方はアリか?

村上稔

今回は先日の参議院選挙について語りたいと思う。エラそうに政治評論かよ、と言うなかれ。実は私は政治については素人ではないのである。

というのは、私はかつて市議会議員を3期務めたのだが、吉野川可動堰(ダム)計画をめぐる住民投票運動からはじまり、それに続く市長選挙、知事選挙と中心的にかかわり、知事を出した後は「側近」としてわずか11か月間で不信任を食らうまで、夜な夜な知事公舎に通って県庁役人との闘いをサポートしてきたという経験を持っている。民主党政権の官房長官だった故・仙谷由人さんとも親しく、彼の言い出した「コンクリートから人へ」は私のコピーのパクリなのである(と私は思っている)。

そんな訳で私は、政治をちゃんと勉強してはいないが、一見の観客では見られない舞台裏の仕組みや力学を垣間見、政治改革の難しさを身をもって経験しているのだからその辺の銭湯談義のおっちゃんと一緒にしてもらっては困るのである。 (続きを読む…)

歩く民主主義 第2回

2019 年 7 月 16 日 火曜日

第2回 中年サーファー再デビューなるか

村上稔

私は50歳を超えていまだに自分探しをしている。なりたい自分になれていないと感じていて、静かにもがいているのだ。

しかし私の自分探しは、やはり若者のそれとは少し違っている。若者は自分が何をやりたいのか、好きなのかが分からなくて探しているのだろうが、私の自分探しは「自分らしさ」や「やりたいこと」などはだいたい分かっているのだ。

ただそれが積年のゴミの山に埋もれ、どこに行ったのか分からなくなっていて、それを見つけるためには、かなりのパワーで発掘しなければならないのである。つまり、若者の爽やかなそれに比しておじさん(私)の自分探しは、カビや腐臭との格闘といった様相を呈する。

このゴミの山という表現は、もちろん精神を表すメタファーであるのだが、先週の私にとっては「現物」なのであった。 (続きを読む…)

歩く民主主義 第1回

2019 年 6 月 14 日 金曜日

第1回 1945年の彼女たち

村上稔

 
住民投票を実現するために市議会議員になったのが32歳の時だからもう20年になる。住民投票は成立し、私たちは吉野川可動堰(巨大ダム)の建設を中止させることに成功した。

そして8年前に県議への転身を目論んで落選、買い物弱者対策の移動スーパーの仕事を始めた。以来コツコツと台数を増やし、今27台の移動スーパーが徳島県内すべての市町村をカバーしている。

というわけで、住民投票の署名集めから始まり、選挙や買い物弱者のお客さん探しまで、年がら年中、人を訪ねて歩くのが私の仕事なのである。

今でも週に2,3日は住宅地図をつぶしながら、1軒1軒歩いている。そんな日々の中で私は、意図せぬままいつの間にか、「歩き=現場主義」の人になっていた。

何かの問題について考える時、理論や机上ではなく、まずは現場に立ってみるというのが、一番間違いが少ないのではないだろうか。……これが20年間の歩きの中から体得した私の確信のようなものなのである。 (続きを読む…)