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第24回(その2) セウォル号沈没事故とソウル市教育監選挙から考える『動員された近代化』
──李泳采(恵泉女学園大学、『動員された近代化』監訳者)

前回記事:(その1

 

2.ソウル市教育監選挙と開発動員型教育の改革への期待

300名以上の犠牲者を生んだセウォル号の沈没事故の影響もあり、6月4日に行なわれた地方自治体選挙(投票率56.8%)では朴槿恵政権の惨敗が予想されていた。だが、蓋を開けてみると、広域団体長選挙は、与党・セヌリ党(仁川、京畿道、釜山など8地域、得票率:48.38%)と野党・新政治民主連合(ソウル、忠清道4地域など9地域、得票率:41.14%)はほぼ同様の成績であった。ソウルでは、朴元淳市長が再選となり野党優位の地域であることを見せたが、地方では中高年を中心に朴槿恵政権や保守与党の影響力が未だに根強く残っていることが明らかになった。

一方、同日に行われた教育監選挙では、ソウル・曺喜昖教授を含めて13名の進歩派(4人の保守派)の教育監が大挙当選された画期的な結果もあった。韓国では2006年から市・道の教育監を直接選挙で選出してきた。2010年に引き続き、2回目の選挙であったが、2回ともソウルでは進歩派が当選している。それほど、教育改革への国民の期待が非常に高いのだ。

ソウル市長が「副大統領」と呼ばれることに対して、ソウル市教育監は「教育大統領」とも呼ばれているほど権限が強い。ソウル市教育監の場合、年間7兆ウォン予算の運用、5万6000名以上の教育関連の人事権、教育規則の制定や学校設立の認可、小・中・高校の入試政策の変更、学校給食制度の整備など教育全般に関する影響力が非常に大きい。

ソウル市の教育は、全国の教育モデルにもなる。ソウル市教育監に当選した曺喜昖教授は、韓国社会で一番難しい、しかし非常に重要なソウルの教育問題に取り組む中心的な存在となったのである。彼の政策が成功するか失敗するかが、韓国教育の構造的な問題の解決にかかっており、国民の関心が集まっている。

近代国家体制の整備以降、日韓の国家機構は国民の生命と権利を守ると言いながらも、何度も棄民政策をとってきた前科がある。また両国ともに開発と動員体制による経済成長や国家競争力だけを優先し、貧困や格差で苦しんでいる弱いものを先に切り捨ててきた。

曺喜昖ソウル市教育監が書いた『動員された近代化』は、日韓両国に共通しているこのような開発動員体制の矛盾と本質を指摘している。セウォル号の沈没の社会的な背景、開発動員体制を継承している朴槿恵政権誕生の歴史的な経緯など、韓国現代史の今がよくわかる貴重な1冊である。今後、開発動員方式の韓国教育を変えていく道案内の貴重な本にもなるだろう。