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第24回(その1) セウォル号沈没事故とソウル市教育監選挙から考える『動員された近代化』
──李泳采(恵泉女学園大学、『動員された近代化』監訳者)

※去る6月4日、韓国では地方自治体選挙が行なわれた。同じ日、教育監選挙も行なわれ、『朴正煕――動員された近代化』の著者・曺喜昖(チョ・ヒヨン)さんを含めて13名の進歩派の教育監が大挙当選された画期的な結果となった。

セウォル号沈没事件という大きな事件を受け、韓国社会のいまを、本書の監訳者である李泳采(イ・ヨンチェ)さんに投稿していただいた。

1.セウォル号の沈没事故と韓国社会の構造的な問題

2014年4月16日、仁川(インチョン)港から済州島へ向かっていた大型旅客船「セウォル(世月: SEWOL)」が、沖海上で転覆し沈没した。2カ月以上過ぎた現在も、毎日海中や船内捜索が行われているが、死亡者293名、失踪者11名(2014年6月28日現在)という韓国最大の海難事故となった。高校生を含め300名を超える乗客が転覆した船内に残されているのに、「動くな」という放送が続き、一方で船長と船員12名が先に救助されていたことに韓国社会は衝撃を受けた。
朴槿恵大統領は彼らに「殺人罪」を適用し、会社経営陣などへの「聖域なき捜査」、救助に失敗した「海洋警察」を解体するように指示した。しかし、そのような措置で沈没事故の本質的な問題が解決されるだろうか。セウォル号沈没事故から読み取れる韓国社会の現状は次の3点から考えてみる。

第一に、新自由主義政策による非正規雇用の問題である。セウォル号は、逃げた船長だけでなく、機関部17名のうち12名、29名の乗務員のうち15名が契約職で、7割の非正規雇用による運行体制になっていた。韓国は97年為替危機(IMF支援管理体制)以降、新自由主義政策を実施して、非正規・派遣雇用を合法化してきた。鉄道、飛行機、原発、海運など国家の基幹産業も同様に非正規雇用体制に依拠しており、大型事故発生の場合、その対応に非常に脆い社会体制になっている。

第二に、統合的な国家危機管理システムの不在である。会社の不法経営による遭難事故が発生したとしても、救助活動は国家機構の責任である。しかし、救助に駆けつけた海洋警察の緊急連絡システムは機能せず、後手後手の救助措置、人命優先より利益優先の構造になっている救助ビジネスなど、様々な問題が顕在化した。
韓国は70年代以降高度経済成長を成し遂げてきたものの、社会の制度的な質はそれとはかけ離れていたのである。まさに70年代の朴正煕政権の開発独裁型による国家建設の後遺症は、曺喜?教授が『動員された近代化』の本で指摘しているように、現在までも韓国社会を根深く支配している幽霊のように生きていたのである。

第三に、教育の側面である。転覆直後、船長は「動くな」という船内放送を流したまま先に逃げていた。危機のとき、どういう行動をとるのが賢明であるかは複雑な問題であるが、学生たちはいかにも純粋にその命令に順応していたのは事実である。大学入試のために英語や数学を中心に競争教育を受けてきた一方、体験学習やキャンプ、水泳など身の危険に臨機応変に対応できる実践教育をしてこなかった韓国の教育問題も浮き彫りになった。この問題意識が続いた6月の地方自治体選挙で教育改革を訴える進歩系の教育監の大挙当選に繋がったのである。

 

(※2は次回につづきます)

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