著書に
『スイス 歴史から現代へ(地域主義・直接民主政・武装中立)』刀水書房
『スイス中世都市史研究』山川出版社
『ルターの首引き猫―木版画で読む宗教改革―』山川出版社
『物語 スイスの歴史 知恵ある孤高の小国』中央公論新社
『スイス 中世都市の旅』(世界歴史の旅)山川出版社
『図説 宗教改革』河出書房新社、ほか多数
翻訳に
R.W.スクリブナー、C.スコット・ディクスン『ドイツ宗教改革』岩波書店
ほか多数
編著書に
『日本とスイスの交流』森田安一 編 山川出版社
『スイスと日本』 森田安一 編 刀水書房
ほか多数 彩流社 サイリュウシャ 第一部 日本への長い道のり
1 ジパング――美化から啓蒙へ
2 閉じられた牡蠣の中――鎖国
3 スイス人の「血液貿易」と日本――スイス傭兵の日本小旅行
4 世界周航の途上で――長崎・出島を描いたスイス人
5 帝国主義時代――スイスと日本の出会った時代
6 牡蠣の殻はこじ開けられた――開国
第二部 スイスと日本――相互発見
7 共和州瑞典――見知らぬ使節
8 アンベール氏の待ちに待った日――スイス使節団長の歩み
9 スイスにおける侍の沈黙――徳川使節団の旅
10 岩倉具視は一八七三年にリギ山で何を見たか――岩倉使節団の見たスイス
11 不思議な国・明治日本におけるスイス人――商人とお雇い外国人
12 ヌシャテル出身のスイス人が日本の歴史をつくる――ファーヴル‐ブラントと西郷
13 スイス人が見た日本人の風俗・習慣――ハラキリからアルプス登山まで
14 江戸から東京へ――消える伝統
15 物事が異なった基準で動く――急速な近代化
16 日本におけるウィリアム・テル――自由民権運動
17 ソルフェリーノと薩摩――国際赤十字と博愛社
18 ゴリアテに向かうダビデ――日清戦争
19 着物姿のホドラー――「浮世絵」の衝撃
20 戦線のゲルチュ大佐――日露戦争
21 重い遺産――大帝国の幻想 (社)日本図書館協会 選定図書 意外に知られていない歴史の内幕!
政治的・経済的に鮮やかな対照をなす日本とスイスが、
なぜ早い時期から友好関係を築いてきたのか?
「日本とスイスを論じようとするとき、互いに相異なる二国が比較的早い時期に、正確に言えば一八六四年に、公式の接触を開始し、それもスイス側のイニシアティヴで始まったのはなぜか、という根本的な問いに必然的に行き着く。その後相互に理解し合おうと努めても、言語的・文化的障壁によって交流は困難をきわめただけではなく、両国の政治的・経済的構造はまさに対照的姿を示していた。日本人の最初のスイス訪問者はすべて旧封建社会のエリートたちであったが、彼らにとって小国スイスは、西洋の多数の諸国を長いあいだ旅行したなかで、異国趣味にもっとも溢れた国であった違いない。国王も貴族もいなければ、国のトップの大統領もはっきりと認識されない。けれども、この国は外見上よく機能し、安定し、技術的にたいへん進歩していると映った。
反対にスイス人の目には、すべての領域において近代化しつつあった日本は、自由や民主主義といった普遍的な価値を実際に証明する展望をもって、希望溢れる文化的試みをする姿に映った。このことが具体的に可能に思えたことが、日本の政治的エリートたちが日本を大帝国形成に傾斜した道へと歩ませたときにも、スイス人の日本への眼差しは無批判的で、好意的なままに留まっていた。この場合に、発展と民主主義が手に手をとって進むことができるのかという根本的な問題が浮かび上がってくる。わたし自身はこの問題を基本的に肯定したい。スイスがその最善の例である。豊かさと平和への最速の道が開明的な少数のエリートの指導のもとで行われる侵略や搾取を通じてである、と信じることはまったくの間違いであったし、現在も間違っている。」(「まえがき」)