お知らせ
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内容紹介
印刷技術の革新により、出版界が急成長をとげた19世紀半ばのアメリカ。「資本家」としての出版社が登場、内容や販売戦略等、出版物全体をプロデュースし、規格化した物語本を低価格で次々と世に送り出した。
商標名「ダイムノヴェル」【1ドル分の内容を1ダイム(10セント)で提供する】は、19世紀後半~20世紀初頭のアメリカで大量に出版された安価な物語群を意味するようになる。
本書は、ネイティヴ・アメリカン、奴隷制、西部のアウトロー、探偵小説、SF、ワーキングガールを扱った作品からダイムノヴェルの特徴を読み解き、アメリカ社会の底辺に蓄積された文化的営為を掘り起こし、アメリカ人に形成された「意識」を探る試みである。
前書きなど
◉「ほんのヒトコト」
第12回 ダイムノヴェルの魅力────山口ヨシ子(『ダイムノヴェルのアメリカ』)
版元から一言
◉豊富な図版で、アメリカの出版文化がよくわかります!
◉(社)日本図書館協会 選定図書
◉書評……読売新聞/尾崎真理子氏(2013年1月10日)
日本経済新聞(2013年1月10日)
新潟日報(2013年12月25日)
静岡新聞(2014年2月9日)
『神奈川大学評論』第77号/前田陽子氏(2014年3月)
『ハヤカワミステリマガジン』2014年7月号/松坂健氏
著者プロフィール
- 山口 ヨシ子(ヤマグチ ヨシコ)
Yoshiko Yamaguchi
神奈川大学外国語学部英語英文学科教授。
目次
まえがき
第1章 ダイムノヴェルの登場
──スティーヴンズ『マラエスカ』とエリス『セス・ジョーンズ』
1 文学的革命
万人のための本/消費行為としての読書と読書形態の変化
ビードル社の試み/ダイムノヴェルと南北戦争
ダイムノヴェルのベストセラー
2 ネイティヴ・アメリカン、フロンティア、ロマンス、アメリカ
アメリカのスター作家によるダイムノヴェル
愛国主義的プロジェクト/「インディアン捕囚物語」の伝統
3 女性向け小説から万人向けダイムノヴェルへ
出版社の介入/捕囚から自由への闘争へ
悲劇を生みだす偏見/ポカホンタス伝説の「焼き直し」
4 捕囚、追跡、救出からヒーローの誕生へ
先住民を敵とする冒険アクション/「命のドラマ」
ロマンスの道徳性/アメリカン・ヒーローの誕生
5 ビードル社の宣伝戦略
「セス・ジョーンズって誰だ?」/神話の生成
第2章 ダイムノヴェルと奴隷制
──ヴィクター『モーム・ギニーとそのプランテーションの「子どもたち」』
1 もう一つの「アンクル・トムの小屋」
文学的南北戦争/出版社の覚書/イギリスでの出版
2 「楽しいロマンス」という枠組みのなかで
奴隷制を描くダイムノヴェル/ハッピー・エンディング
宗教色の排除と恋愛という宗教
3 「楽しいロマンス」をこえる奴隷制の現実
ナット・ターナー事件の小説化/ヒギンソン論文との類似性
フィクションとしてのドラマ性
4 奴隷のなかのカラーライン
反奴隷制小説における白人優越意識
奴隷制擁護の小説との類似性と差異
5 結末の意味するもの
奴隷にとってのハッピー・エンディングとは
リベリアへの植民計画
第3章 無法者のヒーローと男装のヒロイン
──ウィーラー「デッドウッド・ディック」シリーズ
1 アメリカ西部のロビン・フッドと堕落した女
アウトロー、主役となる/社会的盗賊
アウトロー人気の社会的背景/カラミティ・ジェイン
2 サウスダコタ、デッドウッド、一八七七年
フロンティアの移動/敵は資本主義社会
アウトローになる理由/自警・私刑行為の容認
私憤から公憤へ/アウトローの匿名性/品のよいアウトロー
3 「ダイムノヴェル・ヒロイン」のからく
カラミティ・ジェインはニュー・ヒロインか
マーサ・ジェインからカラミティ・ジェインへ
西部で女が生きるには
男性を援助する使命/「真の女性」への帰結
4 「堕落した女」が生き続けるということ
結婚外の性と心の純潔性/奔放な女性の行く末
「悪女」を描く理由
暴力に表われる復讐心と反抗心/フェミニスト・ウェスタンへ
5 資本主義社会批判から探偵小説へ、そして「労働騎士団」の物語へ
労働と資本/平等に分配するという理想
アウトローからディテクティヴへ
第4章 ダイムノヴェルと探偵小説
──ヴィクター『配達されない手紙』『フィギュア・エイト』
1 無視された探偵小説
人気探偵キャラクター/アメリカのシャーロック・ホームズ
プロレタリアの探偵/家庭探偵小説
2 規格外のダイムノヴェル
長編小説としてのダイムノヴェル/結婚で終わる探偵小説
探偵小説の母/「流血と暴力の物語」から家庭探偵小説へ
3 探偵の登場
探偵小説の基本ルール/探偵出現の背景
バートン探偵/透視、直観、追跡/探偵の変装
4 語り手、助手、素人探偵、探偵小説の語り
遍在する素人探偵/女探偵の登場/探偵小説の語り
5 家庭探偵小説としての特徴
アドヴァイス本としての探偵小説/労働者階級の女性への配慮
元祖探偵小説の母
第5章 SFダイムノヴェル
──テクノロジー、冒険、帝国主義
1 スティームマン誕生
世界最初のSFシリーズ/SFダイムノヴェルの始祖
エジソンとSFダイムノヴェル/SF、ウェスタン、探偵小説
2 少年の「夢実現の物語」──エリスのスティームマン
天才少年発明家/スティームマン、魔法の発明
武器としてのスティームマン
3 エリスからエントン、セナレンズのスティームマンへ
威力を増すスティームマンと残虐シーン
戯画的な悪人と異人種間結婚
アイルランド人と探偵、そして黒人の従者
スティームマン、戦車となる/先住民はつねに敵/世界への冒険
4 フランク・リード、ジェシー・ジェイムズを追跡する
ジャンルの融合/発明家と無法者との対決
スティームチームとジェシーの愛馬との対決
映像に近いテクスト/探偵としての発明家
5 ダイムノヴェルから『アーサー王宮廷のヤンキー』へ
キャメロットのスティームマン/白いインディアン
魔法のテクノロジー/冒険旅行とその結末
第6章 ワーキングガールから遺産相続人へ
──ローラ・ジーン・リビーの恋愛小説をめぐって
1 ベストセラー・リストに載らないベストセラー作家
ワーキングガールのための読物/ワンパターンの恋愛小説
2 新しいジャンルの小説の誕生まで
女性都市労働者の増加/女性賃金労働者への賛辞
「バーサ、ミシン踏みの娘」/ラリーからレオニーへ
サウスワースからリビーへ
3 成功物語におけるジェンダーと階級
成功の概念/「真の女性」としてのワーキングガール
宗教と政治の排除/運命の逆転
4 読者としてのワーキングガール
現実を忘れるための娯楽/夢みる規則の共有
読書行為の変化/女性移民労働者にとっての読書
5 ロマンスのメディア性
ワーキングガールと英語/ドレス、仮装舞踏会、殺人、火事
事件性と連続性/メロドラマによるカタルシス
カートヴォネガット アリーダーズガイドトゥカートヴォネガット 978-4-7791-1791-6 9784779117916 4-7791-1791-7 4779117917 0098 カート・ヴォネガット A Reader’s Guide to Kurt Vonnegut 現代作家ガイド ゲンダイサッカガイド 巽孝之 伊藤優子(YOUCHAN) 浅倉久志 伊藤典夫 大江健三郎 増田まもる 永野文香 中山悟視 吉田恭子 渡邉真理子 タツミタカユキ イトウユウコ アサクラヒサシ イトウノリオ オオエケンザブロウ マスダマモル ナガノフミカ ナカヤマサトミ ヨシダキョウコ ワタナベマリコ 慶應義塾大学文学部教授。1955年東京生まれ。コーネル大学大学院修了( Ph.D., 1987)。主著に『ニュー・アメリカニズム』(青土社、1995年度福沢賞)、Full Metal Apache (Duke UP, 2006)、編著に『反知性の帝国』(南雲堂、 2007年)、編訳にラリイ・マキャフリイ『アヴァン・ポップ』(筑摩書房,1995年/北星堂書店、2007年)ほか多数。 アーティスト。1968年愛知県生まれ。名古屋総合デザイン専門学校卒。普段は YOUCHAN(ユーチャン)名義にてグラフィックアート全般を手がける。主な仕事に装画平田真夫『水の中、光の底』(東京創元社、2011年)、CDジャケット『明日への扉』(フクシマレコーズ、2012年)、スマートフォンインターフェイス『Steamfone』(Foneclay, 2012)他。日本SF作家クラブ会員。 彩流社 サイリュウシャ (収録予定)
はじめに
■ハイホー!ーーヴォネガットの世界
「ハリスン・バージロン」(改訳決定版) (伊藤典夫 訳)
「魔法のランプ」(オリジナル版) (伊藤典夫 訳)
【特別寄稿】ヴォネガットがいちばん笑えたころ(伊藤典夫)
▲マンガ(Part 1)
■プー・ティー・ウィッ?ーーヴォネガットとの対話
「『スローターハウス5』出版25周年記念版序文」(伊藤典夫 訳)
「20世紀への送別の辞」(浅倉久志 訳)
▲ゆかりの地マップ
【インタビュー】「最後の言葉」(聞き手 J・レンティリー/吉田恭子 訳)
▲名言集
【対談】「テクノロジー文明と「無垢(イノセンス)」の精神」(カート・ヴォネガット×大江健三郎)
■そういうものだーーヴォネガットを語る
ヴォネガット連続体(巽孝之)
『スローターハウス5』とアメリカ戦争文学(渡邉真理子)
第二次世界大戦の傷あと(永野文香)
テクノロジーへの反発(中山悟視)
無神論者の教え(中山悟視・永野文香)
徹底解剖(しない)! ヴォネガットの笑い(吉田恭子)
トウモロコシとブタとライターズ・ワークショップ(吉田恭子)
【エッセイ】職業画家のジレンマ――ヴォネガットとアート(伊藤優子)
■チリンガ・リーン!ーーヴォネガットあれこれ
【徹底レビュー】ヴォネガット初の本格的伝記 AND SO IT GOES を読む(増田まもる)
カート・ヴォネガット 年譜(永野文香)
カート・ヴォネガット キーワード事典(伊藤優子)
▲キルゴア・トラウト作品リスト
▲ヴォネガット家系図/作家交友録
▲ヴォネガット映像化・CD化作品セレクション
▲マンガ(Part 2)
■ナイス、ナイス、ヴェリナイスーーヴォネガット作品ガイド
(伊藤優子・永野文香・中山悟視)
『プレイヤー・ピアノ』/『タイタンの妖女』/『母なる夜』/
『猫のゆりかご』/『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』/
『スローターハウス5』/『チャンピオンたちの朝食』/
『スラップスティック』/『ジェイルバード』/
『デッドアイ・ディック』/『ガラパゴスの箱舟』/
『青ひげ』/『ホーカス・ポーカス』/『タイムクエイク』/
短編集+絵本+戯曲/エッセイ集
▲A Vistor’s Guide to Kurt Vonnegut
おわりに
Bibliography カート・ヴォネガット書誌目録(永野文香編)
(社)日本図書館協会 選定図書
◎紹介されました!(掲載情報についてはコチラ) いまこそ、ヴォネガットをーー
テクノロジーへの憧憬と懐疑を軽妙に、ヒューマニスティックに描き続け、2010年代以降アメリカ本国での再評価が進む作家、カート・ヴォネガット。いまだからこそ読むべき作家の背景と作品を、いち早く大解剖!
本邦初訳を含むエッセイや短篇(伊藤典夫、浅倉久志訳を含む)のほか、「カート・ヴォネガット×大江健三郎」対談も収録。気鋭の研究者らによる「テーマ解説」「作品ガイド」、ヴォネガットを知るのに役立つ「キーワード事典」「書誌目録」等も。一目でわかるイラスト図解も充実!
カート・ヴォネガット(Kurt Vonnegut,1922-2007) ユーモアと皮肉に満ちた作風から
「心優しきニヒリスト」とも呼ばれる。現代アメリカ文学を代表する作家。代表作に
『猫のゆりかご』 『スローターハウス5』など(カート・ヴォネガットJr名義)。
タグ: アメリカ文学(評論), 現代作家ガイド