内容紹介
「アイルランド人」のアイデンティティとは──
イェイツが築こうとした「アイルランド」との絆。
アイルランドのノーベル文学賞詩人、ウィリアム・バトラー・イェイツ(1865-1939)は、独自に「アイリッシュ・フォークロア」の収集を行ない、生涯、「フォークロア」に強い関心を抱きつづけた。
本書では、イェイツをとおして独自の変容をとげた「フォークロア」を作品から拾い上げ、その創作活動と「アイリッシュ・フォークロア」の関係を明らかにし、歴史に翻弄されたイェイツの内面世界に迫る。
▼19世紀半ば~20世紀、英国の植民地拡張にともなって、「フォークロア」が世界中に発見された時代、「フォークロア」は社会的に注目を集め、「フォークロア学」も最盛期にあった。一方、アイルランドでは、「フォークロア」を文化的アイデンティティの基盤として、英国の植民地支配からの独立を求めるナショナリズム運動の支柱とみなしていた。
版元から一言
◆書評……図書新聞/谷川冬二氏(2012年3月24日)
著者プロフィール
- 池田 寛子(イケダ ヒロコ)
広島市立大学国際学部准教授。訳書に『アイルランドの人魚歌 新・世界現代詩文庫11-』(ヌーラ・ニゴーノル著、池田寛子 編訳、土曜美術社出版販売、2010年)。
目次
序章 フォークロアとイェイツ
1 フォークロアとは
2 アイリッシュ・フォークロアの世界
3 「イェイツとアイリッシュ・フォークロア」をめぐる議論
4 「妖精」から見えてくるもの
5 ナショナリズムのフォークロア
6 イェイツとフォークロア——初期から後期へと流れるもの
第1章 イェイツの生涯を貫くフォークロア——その政治的背景
1 二つの立場
2 アイルランドの場合
3 イェイツの立場
4 フォークロアの政治的意味づけの強化
5 イェイツのフォークロア観の推移と一貫性
6 イェイツとアイルランド語
第2章 対立を越えて
——劇詩『オシーンの放浪』が予見するナショナリズムの行方
1 カトリック教会と対峙するナショナリスト
——十九世紀末の英雄オシーン
2 キリスト教と異教——聖パトリックとオシーンを繋ぐもの
3 イェイツの異教に内在する他者受容の可能性
第3章 めぐりくる昼と夜——詩集『葦間の風』と太陽シンボリズム
1 民衆の想像力へのあこがれ——限りなき時空へと続く梯子
2 見果てぬ夢——最後の戦いのフォークロア
3 天と地をめぐる魂——人さらいの妖精のフォークロア
4 その後の昼と夜
第4章 ハープの力
——劇詩『影なる海』とイェイツのナショナリズムへの不安
1 ハープと剣——対立か協調か
2 嘆きのハープ
3 愛国のハープ、国家再生のハープ
4 ハープと剣の行方
第5章 物語の力——狂言喜劇『役者女王』と革命のフォークロア
1 革命を呼ぶユニコーン
▼復活祭蜂起のフォークロア ▼ユニコーンのフォークロア
▼ユニコーンがもたらす世界の終わりと始まりの物語
2 イェイツの心の奥を映す歪んだ鏡——女王、首相、詩人
3 ロバとカモメのフォークロア
4 まだ見ぬ革命の物語
第6章 アイルランドの物語の再構築
——「クレージー・ジェーンの歌」と独立後のアイルランド
1 アイルランドが求めるの愛
2 二つの顔をもつ恋人——英雄か侵略者か
3 老女を救うのは誰か——の愛、の英雄の再定義に向けて
4 アイルランドの声の転生
終章 アイルランド文学とフォークロア
ブライアンメリマン マヨナカノホウテイ ジュウハッセイキアイルランドゴシノシホウ 978-4-7791-2058-9 9784779120589 4-7791-2058-6 4779120586 0098 ブライアン・メリマン『真夜中の法廷』 Cúirt an Mheán Oíche (The Midnight Court) 十八世紀アイルランド語詩の至宝 ブライアン・メリマン 京都アイルランド語研究会 メリマン,ブライアン キョウトアイルランドゴケンキュウカイ Brian Merriman (c.1750-1805)
詩人メリマンはアイルランド西部のクレア県に生まれ育ち、グレーネ湖近くのフィークルで算術を教えながら農業も営んでいた。『真夜中の法廷』(Cúirt an Mheán Oíche) は見事な韻律で統制された1026行に及ぶ詩で、人間としての自由を求める立場から性の解放をパロディ風に訴えた。産業発展で増大した社会格差、アイルランドに高まった独立気運、衰退するアイルランド語文学伝統への憂慮のただ中に現われた現代アイルランド語詩の傑作である。晩年、リムリック市に引っ越してまもなく1805年に他界した。 荒木 孝子(奈良大学非常勤講師)
池田 寛子(広島市立大学国際学部准教授)
谷川 冬二(甲南女子大学文学部教授)
中村 千衛(元イーストアングリア大学非常勤講師)
梨本 邦直(法政大学理工学部教授)
春木 孝子(神戸松蔭女子学院大学文学部名誉教授)
菱川 英一(神戸大学大学院人文学研究科教授)
疋田 隆康(京都女子大学非常勤講師)
福本 洋(京都府和束中学校・精華南中学校非常勤講師)
増田 弘果(アイルランド民話研究者) 彩流社 サイリュウシャ 第1部 ブライアン・メリマン『真夜中の法廷』
あらすじ
『真夜中の法廷』翻訳
日本語翻訳方針/シェーマス・ヒーニーによる評価
第2部 解説
第1章 ブライアン・メリマン伝記
第2章 写本・テクスト・英訳
第3章 『真夜中の法廷』の韻律
第4章 アシュリングの枠組み
第5章 英語文学・スコットランド文学との関わり
第6章 同時代アイルランド詩人の影響
第7章 エニス詩人会議と政治・社会背景
第8章 英語文学への影響のはじまり
──W. B. イェイツとフランク・オコーナーにとってのメリマン
第9章 『真夜中の法廷』の歴史的、社会的意義
【巻末横組み】
PART III Texts(第3部 テクスト解説)
Abbreviations(省略記号)
Introductory Notes(まえおき)
Text (Ó Murchú, 1982) and Syntactical Interpretations with Notes(アイルランド語テクスト・英語による文法的解釈・注解)
『真夜中の法廷』語彙ノート・付主要な文法特徴 ◉「ほんのヒトコト」
第31回 18世紀のアイルランド語詩を訳して──春木孝子(京都アイルランド語研究会訳・著『ブライアン・メリマン『真夜中の法廷』──十八世紀アイルランド語詩の至宝』翻訳・執筆メンバー) ◉原詩と英語解釈、語彙ノートもついて、アイルランド語の学習にも最適! 「アイルランドのオルフェウス」
「18世紀文学のもっとも独創的な傑作」──シェーマス・ヒーニー
知られざるアイルランド語文学史上の傑作を、原詩からの本邦初訳でおくる。
18世紀末、アイルランド語詩の伝統が衰えゆくなかで、アイルランド語で書かれた幻想的パロディ──ブライアン・メリマン(1750頃-1805)の『真夜中の法廷』。
アイルランドのノーベル文学賞詩人シェーマス・ヒーニー(1939-2013)は、『真夜中の法廷』を「18世紀文学のもっとも独創的な傑作」として「世界文学」のなかに位置づけ、メリマンを「アイルランドのオルフェウス」と高く評価した。
本書は、『真夜中の法廷』の日本語訳とともに、英語による文法解釈、メリマン論を集約した類例がない貴重な内容となっている。
◉あらすじ
7月のある夏の日、アイルランド西部クレア県で「妖精の法廷」が開かれる。
裁判を司るのは「妖精女王イーヴァル」。
結婚できないアイルランドの状況を嘆く若い女(原告)と、若い妻の不倫を糾弾する老人(被告側証人)。
「被告」として出廷させられた「詩人」の前で繰り広げられる「真夜中の法廷」とは──。
タグ: アイルランド文学(作品)