ある商社マンの痛快人生アフリカに賭ける

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アフリカに賭ける ある商社マンの痛快人生

布施 克彦 著
四六判 / 228ページ / 並製
定価:1,900円 + 税
ISBN978-4-7791-1531-8 C0023
奥付の初版発行年月:2010年05月 / 書店発売日:2010年05月20日
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内容紹介

誰もが夢を追い続ける人生に共感する。特異な才能を持ち合わせたのでもなく、一般にはエリートと呼ばれる人だったが、高い地位に出世した人でもない。人間の基本にこだわり、やりたいことをやり通す。単純で分かり易い人生を送った商社マンの物語。

前書きなど

序章 無名サラリーマンの人生をなぜ書くのか

三十年ぶりのアフリカ
 グローバル化の時代に入り、地球は狭くなったと言われる。でもアフリカは相変わらず遠い。日本を発ち、ドバイ経由でタンザニアの首都、ダルエスサラームに到着するまで、約二十二時間を要した。わたしは約三十年前、駆け出し商社マンとしてアフリカ各地を歩き回っていた。あの頃以来の訪問となるアフリカは、今でも日本からは遙かなる地だ。
 空港からダルエスサラームの街に通じる街道を、車で走っている。両側に立ち並ぶ中小の工場群と、その前に並ぶ食品、雑貨などを売る屋台店。行き交う人の群と、大小様々な車両が作り出す喧騒、そして交通渋滞。車が停止するたびに群がってくる、物売りの少年たち。窓ガラスを閉めていても車中に流れ込んでくる熱気と、独特の汗ばんだ匂い。 
 タンザニアは初めて訪れる国だが、なぜかとても懐かしい。三十年前の違うアフリカの場所の記憶が、ここの風景にピッタリと重なる。アフリカはどこも、あの頃と変わっていないようだ。
 別のアフリカの国で日本製品を売り込むため、街道沿いの工場群を渡り歩いていた頃を思い出す。半そでシャツにジーパンの軽装。アタッシュケースをぶら下げ、アポイントも取らずに、目についた工場や事務所に飛び込む。歓迎してすぐに商談に応じてくれるところがあれば、冷たく無視され、あるいは怒鳴られて、追い出されることもあった。
 一九七八年から一九八二年まで、ここタンザニアに商社マンとして駐在した清水孝も、同じようにこの辺りを歩き回っていたはずだ。五分刈り頭の小柄な男が、眼鏡の奥から好奇心を漲らせた目をギョロギョロさせながら、獲物を求めるように、この界隈を歩き回っていた。
 わたしは自分の思い出に浸るために、アフリカに来たのではない。この本の主人公である清水孝の足跡を辿るためにやってきた。タンザニアのあとは、清水の人生後半の舞台となった、隣国のケニアを訪れる。
 清水孝は、このアフリカの地になぜやってきたのか。そしてアフリカで何を掴み、何を遺したのか。
 
無名の人 
 人生の物語は、今まで生きた人の数だけある。この本は、星の数ほどある人生のうちのひとつを書いたものだ。清水孝という、サラリーマン時代の先輩の話である。彼と出会いのきっかけが、アフリカだった。
 清水孝は無名の人物だ。特に優れた、あるいは特異な才能を持ち合わせた人ではない。でも、見事な人生を送った人だった。それを是非、多くの人に知ってもらいたい。だからわたしは、この本を書いた。
 清水孝は、一流大学を出て、大手企業で働いた。世間一般にはエリートと呼ばれる人だ。でもそれは、表面的なものに過ぎない。学歴や職歴は、個人を飾る大切なものとされる。それらをすべてとするような、社会の風潮さえある。しかし当然のことながら、人間にはもっと大切なものがある。
 清水孝は、高い地位に出世した人ではない。華々しい仕事の実績を上げた人でもない。表面的なお飾りの部分では、ふつうの人だった。恐ろしいほどの幸運に恵まれたとか、同情を禁じ得ない悲運に苛まれた人でもない。でも人に語る価値のある、面白い人生を歩んだ人なのだ。
 清水孝は人間の基本に拘り、それを人生の中で貫いた。やりたいことをやり通す。胸の内を、ストレートに行動に直結させる。絵に描けそうな、単純で分かり易い人生を送った。
 分かり易い人生を送るのは、結構難しい。誰もが、意のままの人生を送りたい。でも人生航路には、多くのしがらみが待ち受けている。それらをクリアするには、どうしたらいいのか。清水の人生が参考になる。

夢を追い続ける人生
 清水孝は、すでに鬼籍に入っている。二〇〇六年の一月、アフリカで事故死した。アフリカは、彼が人生のメインステージに選び、夢を追い続けた場所だった。彼は人生の舞台で、飛び回っている最中に死んだ。少年のころからの夢を、ずっと追い求めていた。夢を追う姿勢は、ほとんどぶれなかった。その途中で前を向いたまま、急死してしまった。
 若いころは、誰にも漠然とした夢がある。それを追い求めて、努力するのが自然な生き方だ。進学や就職は、目指す夢に近づくための手段のはずだ。人生には運、不運が付きまとうが、夢を諦めずに追い求めていれば、誰でもそれを掴むチャンスに巡り合える。そのチャンスを、見極められるかどうか。そのチャンスを生かすための、決断力や行動力があるかどうか。勝負の分かれ目がそこにある。
 清水孝はチャンスを見極め、積極果敢に行動した。その結果、夢の尻尾を首尾よく捕えた。捕えた夢の尻尾を絶対に離さず、しっかりと握りしめ、ジワジワと手繰り寄せた。夢を食う獏のように貪欲に、それを人生の中に取り込んだ。 
 多くの人は、それがなかなかできない。自分の夢に率直に向き合うこと自体が、結構難しい。自らの夢が何かを、判別できない人も多い。チャンスかどうかの見極めができない。チャンスを見極めても、勇気と行動力が伴わない。社会のしがらみに負け、意思を曲げ、自分を誤魔化す。自分の弱さや曖昧さを、周囲や社会の責任へと転嫁する。
 夢の正体を捕まえた清水孝は、それを解体、料理するため、自らの意思に従って行動した。でもそれは、自分勝手とは違っていた。気ままな風来坊や、世間を逸脱した変人でもない。清水はふつうの人だった。一般市民として、社会人として、しっかりと責任と義務を果たした。夫人とともに三人の男子を育て、立派な家庭を築いた。サラリーマンとしても、仕事を楽しみながらきちんと職責を果たした。

ひとに勇気を与える不思議
 社会的な責任や義務を果しつつ、自らの望みを貫き、それを人生の中で具現化する。すごく難しいことのように思える。でも本当に難しいのか。難しく見えるだけではないのか。清水孝を見ていると、なぜかそう思えた。彼の振る舞いには、人に勇気や元気を与える不思議な力があった。
 夢に向かう人生の行く手には、いくつもの壁が立ちはだかる。多くの人たちは、前面にそそり立つ高い壁を見上げて立ちすくむ。でも本当に、そこに壁があるのだろうか。高い壁は、後ろ向きの思いが勝手に作り上げた幻想ではないのか。実際壁があっても、見えるほど実際は高くないのではないか。本当は乗り越えられるのに、試みる前から諦め、引き返してはいないか。
 清水を見ていると、自分もひとつ壁にチャレンジしてみようと、勇気が湧いてきた。彼と付き合っていると、進む努力をしてみようと前向きの思考になった。
「やってみろよ、楽勝だぞ」
 清水の口癖だった。薄っぺらでいい加減そうな言葉だが、彼の口から出ると重みがあった。臆病風を吹き飛ばす勢いがあった。困難を溶かしてしまう神通力らしきものが、彼の無造作な言葉の中には含まれていた。
 わたし自身この言葉に騙されたつもりで、自分の夢へと人生の舵を切った。その結果従来以上に密度の濃い、自分向きの人生に踏み込むことができた。清水孝と付き合っていたお陰だと、今でも思っている。
 ふつうの人でも、夢を人生の中に咲かせることができる。特段の能力や才能は要らない。破格の幸運も不要だ。自らの思いを貫き、夢を掴むことは誰にでもできると思う。
 まずは、夢に立ち向かう確たる意思。そしてそれを後押しする、少しの勇気と精神力、そして行動力と忍耐力。それらをひっくるめた苦労は、命を懸けるほどのものではない。一か八かの賭けでもない。誰もが普段別のところでしている苦労と、同じ程度のものだ。同等の苦労をするためのエネルギー量を、夢の実現に振り向ければよい。
 ふつうの人間である清水孝が、そのことを教えてくれた。彼自身の行動によって、そのことが証明された。

人生の核心とアフリカ
 人生の基本は普遍である。自尊心、他人への配慮、家族への愛情、仕事への情熱、余暇の楽しみ。もちろん、それらに伴う負の感情や行為もある。太古から現在まで、地球上のどこに住もうと、人間の行動基盤はそんなにぶれていないはずだ。各個人の抱く夢や理想を、いかに人生の行動基盤の中に織り込んでゆけるか。それは、古今東西すべての人類にとって共通の、そして人生の核心的課題であり続ける。
 清水孝は人一倍、人生の核心的課題に拘った。生の喜び、死の恐怖、大いなるものへの畏怖、自然や動植物との共生、そして人間同士の心や魂の触れ合い。清水はそういった、人間界の根源をなす事象に敏感であり、それらと直接正面から向き合うことに執着した。そのことに情熱を注ぎ、そこから得られる感激で、人生をジャブジャブに満たしたい。それが清水孝の人生の目的であり、核心的な課題だった。
それらの課題に応えられそうな場所。彼にとって、それがアフリカだった。人間の根源へと連なる諸要素が、地球上で最も保存され、そして露呈している大地。清水孝が、アフリカを人生のメインステージに選んだ理由がそこにある。
 彼はアフリカと出会い、その後ますますのめりこんでゆく。そこで彼は、文明社会が置き忘れた、人間にとって本来あるべきものを見つけた。貧困と飢餓と内戦にさいなまれ続けるアフリカの、いったいどこにそれらがあるというのか。

ナイロビ空港への道で
 わたしのアフリカ取材旅行は、またたくまに終わろうとしていた。タンザニアとケニアで、清水と親交のあった、多くの人々に会った。彼らの心の中に、清水がまだ元気よく生きていることを確認することができた。
 アフリカ有数の大都市ケニアのナイロビは、高層ビル群を豊かな緑や色とりどりの花々がゆったりと包む美しい街だ。旅行最後の日、帰途につくナイロビ空港へ向かう。清水の仕事上のパートナーだったムドマが、空港まで自家用車で送ってくれた。
 時間に少し余裕があったので、ムドマは、少し遠回りになる別の道を通って、空港へと向かった。外国からの短期訪問者は、あまり通らない道だ。その道は、ケニアのふつうの人たちが暮らす街を貫いていている。
 そこには、ナイロビの表通りと違う、別のケニアがあった。本当のケニアと、言っていいのかもしれない。乾季の終わろうとしているこの季節、うねる赤土の大地はひどく乾燥している。時折舞い上がる土ぼこりが、道路の周囲に広がる無数の小住宅を褐色に染め上げる。中には、新しく建てられたと思われる高層アパートもあるが、どれも褐色の土ぼこりに汚れている。
 建物の周囲には、夥しい人がいる。歩いているひと、しゃがんでいる人、大声でおしゃべりしている人たち、そして走り回る子供たち。お昼時なので、街角のそこかしこで山羊肉を焼いている。ガラス窓が半開きになったムドマの車の中に、香ばしい匂いが漂ってくる。明日の食材になる山羊たちが、何も知らずにのんびりと雑草を食んでいた。
 日本とはかけ離れた生活環境だ。わたしは、このようなところではとても暮らせない。絶望的な貧しさを感じさえする。でもここにも、人間の生活がある。大地を揺るがす、唸るような人々のエネルギーを感じる。わたしはそれに対して腰を引いてしまうが、清水孝はそれに体ごと飛び込んでいった。
 清水自身、このような住環境に住んだわけではない。最後は、ばかみたいに大きな家に住んでいた。それでも、日本とかけ離れた環境で暮らすふつうのアフリカ人との触れ合いに、彼は最大限のエネルギーを注いだ。なぜなのか。どこに、人生を費やすほどの魅力があったのか。
 わたしの取材旅行は終わろうとしているが、清水孝の物語はこれから始まる。

版元から一言

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著者プロフィール

布施 克彦(フセ カツヒコ)

1947年東京都生まれ。一橋大学商学部卒業。1970年4月から総合商社に勤務、おもに鉄鋼貿易業務に従事。その間、ナイジェリア、ポルトガル、アメリカ、インドなどで約15年間にわたる海外勤務を経験。1998年より精密機器メーカーに勤務、2002年退社。現在、国際社会貢献センター(NPO)コーディネーター。日本大学、亜細亜大学などで非常勤講師を務める。著書に『自分の本のつくり方 自費出版実践マニュアル 湘南選書1』(湘南社、2009年)、『貿易書類の基本と仕組みがよ~くわかる本第2版 書類がわかれば貿易実務はできる!How-nual図解入門ビジネス』(秀和システム、2009年)、『男なら、ひとり旅。PHP新書』(PHP研究所 、2007年)、『団塊の世代だから定年後も出番がある 洋泉社新書y』(洋泉社、2006年)、『57歳のセカンド・ハローワーク』(中経出版、2005年)、『島国根性を捨ててはいけない 洋泉社新書y』(洋泉社、2004年)、『24時間戦いました 団塊ビジネスマンの退職後設計 ちくま新書』(筑摩書房、2004年)、『54歳引退論 混沌の長寿時代を生き抜くために ちくま新書』(筑摩書房 、2003年)などがある。

目次

序章 無名サラリーマンの人生をなぜ書くのか 

第一章 越山 
 一.葬儀での思い 
 二.越後長岡 
 三.文武両道を目指す 
 四.大阪で身を固める 

第二章 アフリカとの出会い 
 一.遂にアフリカへ 
 二.キンシャサ駐在員 
 三.ビジネスとの格闘 
 四.アフリカの人々のためになること 

第三章 豊かなるアフリカの日々 
 一.アフリカ・リターン作戦 
 二.充実のタンザニア生活 
 三.ケニア、そして南アフリカへ 

第四章 人生の旅本番 
 一.独立 
 二.出会いと感激 
 三.月の山から帰らず 

第五章 清水孝の人生を総括する 
 一.優秀なビジネスマン? 
 二.よき家庭人? 
 三.ホンモノの国際人 

終章 清水孝の足跡を辿る 
 一.平和の国タンザニア 
 二.ケニアで想ったこと 

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