ブライアン・メリマン『真夜中の法廷』
2014 年 11 月 25 日 火曜日詩人メリマンはアイルランド西部のクレア県に生まれ育ち、グレーネ湖近くのフィークルで算術を教えながら農業も営んでいた。『真夜中の法廷』(Cúirt an Mheán Oíche) は見事な韻律で統制された1026行に及ぶ詩で、人間としての自由を求める立場から性の解放をパロディ風に訴えた。産業発展で増大した社会格差、アイルランドに高まった独立気運、衰退するアイルランド語文学伝統への憂慮のただ中に現われた現代アイルランド語詩の傑作である。晩年、リムリック市に引っ越してまもなく1805年に他界した。 荒木 孝子(奈良大学非常勤講師)
池田 寛子(広島市立大学国際学部准教授)
谷川 冬二(甲南女子大学文学部教授)
中村 千衛(元イーストアングリア大学非常勤講師)
梨本 邦直(法政大学理工学部教授)
春木 孝子(神戸松蔭女子学院大学文学部名誉教授)
菱川 英一(神戸大学大学院人文学研究科教授)
疋田 隆康(京都女子大学非常勤講師)
福本 洋(京都府和束中学校・精華南中学校非常勤講師)
増田 弘果(アイルランド民話研究者) 彩流社 サイリュウシャ 第1部 ブライアン・メリマン『真夜中の法廷』
あらすじ
『真夜中の法廷』翻訳
日本語翻訳方針/シェーマス・ヒーニーによる評価
第2部 解説
第1章 ブライアン・メリマン伝記
第2章 写本・テクスト・英訳
第3章 『真夜中の法廷』の韻律
第4章 アシュリングの枠組み
第5章 英語文学・スコットランド文学との関わり
第6章 同時代アイルランド詩人の影響
第7章 エニス詩人会議と政治・社会背景
第8章 英語文学への影響のはじまり
──W. B. イェイツとフランク・オコーナーにとってのメリマン
第9章 『真夜中の法廷』の歴史的、社会的意義
【巻末横組み】
PART III Texts(第3部 テクスト解説)
Abbreviations(省略記号)
Introductory Notes(まえおき)
Text (Ó Murchú, 1982) and Syntactical Interpretations with Notes(アイルランド語テクスト・英語による文法的解釈・注解)
『真夜中の法廷』語彙ノート・付主要な文法特徴 ◉「ほんのヒトコト」
第31回 18世紀のアイルランド語詩を訳して──春木孝子(京都アイルランド語研究会訳・著『ブライアン・メリマン『真夜中の法廷』──十八世紀アイルランド語詩の至宝』翻訳・執筆メンバー) ◉原詩と英語解釈、語彙ノートもついて、アイルランド語の学習にも最適! 「アイルランドのオルフェウス」
「18世紀文学のもっとも独創的な傑作」──シェーマス・ヒーニー
知られざるアイルランド語文学史上の傑作を、原詩からの本邦初訳でおくる。
18世紀末、アイルランド語詩の伝統が衰えゆくなかで、アイルランド語で書かれた幻想的パロディ──ブライアン・メリマン(1750頃-1805)の『真夜中の法廷』。
アイルランドのノーベル文学賞詩人シェーマス・ヒーニー(1939-2013)は、『真夜中の法廷』を「18世紀文学のもっとも独創的な傑作」として「世界文学」のなかに位置づけ、メリマンを「アイルランドのオルフェウス」と高く評価した。
本書は、『真夜中の法廷』の日本語訳とともに、英語による文法解釈、メリマン論を集約した類例がない貴重な内容となっている。
◉あらすじ
7月のある夏の日、アイルランド西部クレア県で「妖精の法廷」が開かれる。
裁判を司るのは「妖精女王イーヴァル」。
結婚できないアイルランドの状況を嘆く若い女(原告)と、若い妻の不倫を糾弾する老人(被告側証人)。
「被告」として出廷させられた「詩人」の前で繰り広げられる「真夜中の法廷」とは──。