書店をたずねて三千里

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紙の本はやっぱり美しい。そして儚い。

先日、ある書店を営業していたら、カバーも真っ黒で、小口も真っ黒の本が平積みになっていた。
真っ黒なのに目立つ。というか、真っ黒過ぎて目立つ本だった。
版元名を見ると月曜社の新刊だった(→http://getsuyosha.jp/kikan/isbn9784865030174.html)「ああ〜やっぱり」と思ってしまったのと、作った編集者の顔も浮かんだきた(最近初めて月曜社の編集の方にお会いする機会があったので、はっきり顔が浮かんだが、二人出版社なので、もう一人の方が編集したのかもしれないですが…)。

黒はインク代が高くつくはずなので、製造原価が上がるから基本的にはあまり使わないはずだが、カバーどころか、小口まで真っ黒しているところがまたすごい。何か深い意味があるのだろうと、いろいろと作った編集者の想いや出版に対する思想などにも、想いを巡らす。

こういったことは紙の本でないとありえない。
もし電子書籍がどんどん増えていって、紙の本を作るのが一般的でない時代になったら、もし紙の本が一部の高価な豪華本ということで残ったとしても、今のように、書店で様々な紙の本をたくさん並べる売り方は成り立たなくなるだろう。書店が倒れる前に、印刷会社や製本会社がどんどん倒れれば、紙の本は今のように作られることはなくなるだろう。
返品の問題とか、無駄な在庫や、見計らいで平積みするリスクのことなど、いろいろと問題があるのは分かっていても、書店が保守的になり過ぎて、多彩な品揃えができなくなってしまう時代が、目の前まで来ているのかもしれない…。

でも、そんな未来は来てほしくない。
本を愛する者、書店を愛する者達にとって、これほど味気ない世界はないだろう。

紙の本の匂い、めくる時の紙のサラサラという音、カバーの手触り、色、様々な加工による多彩な造本、そして書店によって違う品揃えと並べ方、什器の違い、店独自のブックフェアなど、その全てが美しい。

そして紙は劣化するが故に、限りある儚い姿が、人間と同じで味わい深い。

電子書籍は嵩張らなくて、海外旅行や通勤電車で読むには適している。断片的な情報を読むためにも適しているし、単語を検索したりするのもすぐれている。紙の本とまったく違う部分ですぐれている。それも分かっている。

どちらも必要なんだ。
だから、共存共栄する未来を目指し、紙の本から湧きいずる知の泉を絶やさぬための道を、探さなくてはならないと思う。

【文責 春日俊一】