書店をたずねて三千里

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書店ほどワクワクする空間はない

今週の水曜日の夜、後楽園の文京シビックセンターにて弊社も参加している出版協の若手が中心になって立ち上げたイベント「日本出版者協議会プレゼンツ編集者連続講座/第3回 本と読者を切り結ぶ平台・棚の編集を考え る~一冊の魅力をどう引き出すのか」が開催されまして、講師に、あゆみBOOKS小石川店の久禮亮太さんと、東京堂書店神田神保町店の清都正明さんをお招きして、いろいろと書店の仕事の裏側、仕入れの面白さと難しさについて語っていただいた。

久禮さんは70坪に満たない街の本屋さんの店長、清都さんは歴史のある神保町の300坪の有名書店の文芸担当と、それぞれ立場は違うのだが、本当に本屋の仕事が好きで働いている人たちだ。

清都さんが仕掛けるブックフェアはいつも独特で、他の書店では絶対に見られない切り口でいつも驚かされる。売れ筋の本も当然置いているということだが、間違いなく東京堂は、そういう本を求める人が頻繁に来る書店ではないので、お客様の問い合わせや、売れ行きをもとに、さらに東京堂独特の品揃えに磨きがかかっていっているように思う。

久禮さんは小規模の書店ながら、雑誌やコミック中心に偏らず、人文書も置いているし、売れた本のスリップを毎日見て、まとめ買いをしたお客さんの本のスリップはジャンル別に分けずに、お客さんの購入ごとにまとめ、お客様それぞれのパーソナルな購入の文脈を分析し、仕入れに活かしている。お客様との本を通した無言の交流の中で、本を仕入れ、売って、その店に来店するお客様のニーズに少しでも近づける努力を毎日している。

本屋の仕事って面白い。二人の話を聞いていて、思わず自分もまた書店で働きたくなってしまった。

自分はなぜ書店を辞めたのか…様々な理由があったと思うが、はっきりとしたものは思い出せない。お二人も言っていたが、新人に仕事にやりがいをもって育ってほしいと願っても、給料の問題、最近は出店ラッシュも終わってしまって、どんなに頑張ってもなかなか新店に店長として任せてやれないので書店員としての成長の実感を与えてやれない、というような話も講演が終わったあと、二次会に行く道すがら途中で話されていたのが印象に残った。

私もかつて某書店で、24歳ぐらいで実質副店長的な立場になり(その某書店は当時急成長していた書店で、しかも社員の増員も追いつかず、一店舗あたりの社員が平均二人か三人と少ないのでスピード出世とかではなく他に正社員がいないから、実質正社員になるとすぐに店舗内の立場が上になる)、大学生から、自分の母親でもおかしくないと年齢のパートさんや、なかには元紀伊國屋の部長さんで定年退職したあと、バイトで再就職してきた人など、数十人の人間のマネジメントを経験も無いのにいきなりすることになって、とても戸惑った記憶がある。

まだまだ世間知らずの若造が、いきなりアルバイト、パート数十人を動かして店舗運営をするのはかなりハードで、パートさんに嫌われて、店長一人がずっと雑誌の品出しをしている店の話や、社員が二人いる店で、嫌われた社員の方にはまったくパートさんやアルバイトさんから仕事の相談もなく連携もとれなくて、嫌われた社員しかいない日は仕事がまわらなくなるようになってしまう状況も見たことがあった。幸い自分はそこまでひどい状況になったことはないが、本当にみていて怖かった。
マネジメントの難しさを24歳で実感し、良い勉強にはなったと思うが、その代わり人の管理の仕事ばかりに追われ、書店員の仕事の面白さや楽しさの中心である、仕入れや棚作りや版元の営業の方とじっくり協業する時間が少なく、日々人を動かすことばかりで疲れてしまい、最終的にその書店を退職することになったと思う。やはり仕事にはバランスが必要だ。そう実感した書店員の仕事経験だった。

書店員は辞めてしまったが、いまでも本屋は本当に好きで、とくにそのなかでも、あゆみBOOKSと東京堂は特別な書店だ。

よく行く書店なのに、いつも入店する時にワクワクさせられる。それは今日も何かに(本に)出会えるかも、見つけちゃうかも、というワクワク感だ。

だからお金がない時は、本当に困ってしまう。そんなときに限って、たくさん欲しい本に出会ってしまうから。

お二人がずっと辞めないで書店員として頑張って働いてもらって、さらに若手を育ててもらって、この二人のような書店員が増殖していくのを願ってやまない。

【文責 春日俊一】