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トナカイ牧畜民の食の文化・社会誌 

2003 年 6 月 20 日 金曜日

『トナカイ牧畜民の食の文化・社会誌 』表紙\
書籍名   : 千葉大学人文学叢書 1
トナカイ牧畜民の食の文化・社会誌
西シベリア・ツンドラ・ネネツの生業と食の比較文化
(トナカイボクチクミンノショクノブンカ・シャカイシ)
著者名   : 吉田睦(ヨシダアツシ) 著
発行日   : 2003-04-28
税込価格 : ¥2990
本体価格 : ¥2800
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★「週刊読書人」6/20
「西シベリア北部からウラル山脈を越えたヨーロッパロシア北部の広大な領域には、トナカイ遊牧民として知られるネネツ人の生活空間が拡がっている。ロシアの少数民族でもある彼らの言語は、ウラル語族サモイェード語派に属し、現在の人口は約三万五千人である。本書は、そうした中にあって西シベリア北部に位置するギダン半島に暮らすネネツ人の伝統的生業と食文化に焦点をあてた民族誌である。この本の特徴を一言で述べるならば、ソビエト民族学の良質な意味での継承と日本の人類学の調和となろう。綿密な現地調査によって得られた民族誌資料と広範にわたる文献資料の渉猟が見事に組み合わされているからである」

ピョートル前夜のロシア

2003 年 6 月 1 日 日曜日

『ピョートル前夜のロシア』表紙\
書籍名   : ピョートル前夜のロシア 亡命ロシア外交官コトシーヒンの手記
(ピョートルゼンヤノロシア)
著者名   : グレゴリイ・コトシーヒン(グレゴリイ・コトシーヒン) 著
松木栄三(マツキエイゾウ) 編訳
発行日   : 2003-04-14
税込価格 : ¥5000
本体価格 : ¥4800
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★丸善書店「學鐙」6月号
「本書は、ロシアの外交官が亡命先で外国人のために書き残した政府の内部情報。皇室の冠婚葬祭の儀式、貴族・宮廷官から大膳職・小姓にいたる職制、外交関係、財政、行政、軍事、さらに商業、交易、生活習慣にまでおよぶ。17世紀中頃、ピョートル大帝の父アレクセイ帝治世下のロシア研究に欠かせない資料。編訳者による原著者の経歴解説と当時の国家機構や社会制度などの詳細な訳註ほかも収載」。

精進料理紀行

2003 年 6 月 1 日 日曜日

『精進料理紀行』表紙\
書籍名   : オフサイド・ブックス26
精進料理紀行 全国「味とこころ」の寺めぐり
(ショウジンリョウリキコウ)
著者名   : 藤岡良(フジオカリョウ) 著
発行日   : 2003-05-06
税込価格 : ¥1680
本体価格 : ¥1600
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★『読売新聞』03年6月1日
*この他『朝日』大阪版夕刊6月2日、『上毛新聞』5月16日など。

「全国96寺の精進料理「巡礼」のルポ。 究極のスローフードを紹介しながら、 食することの意味、 他者の命を「いただく」 ことの意味、 そしてスローライフの貴重さを考えさせてくれる。 自らも修行を体験し、 それぞれの寺とレシピを丁寧に案内する。 何よりも一期一会を大切に、 料理する僧たちの奥深い言葉を読者に伝えようという著者の筆致に好感が持てる」。

★共同通信配信、各地方紙
「”精進料理”はこんなに多彩――\全国のお寺で食べられるさまざまな精進料理を紹介した『精進料理紀行竏酎S国「味とこころ」の寺巡り』が出版された。 岩手県から宮崎県まで、精進料理を出す百近い寺院を訪れた著者が、料理の内容や住職の思いなどをルポスタイルでまとめた。料理紹介であると同時に旅のガイドブックとしても便利だが、驚かされるのは、肉を使わない料理とひとくくりにしがちなこの料理の、見事さ、多彩さ。伝統的な精進料理に加え、和風グラタンの正覚寺(埼玉県名栗村)、ナイフとフォークで食べるフランス料理風の意足院(熊本県球磨村)。ブドウで有名な山梨県勝沼町にある大善寺では、ワインゼリーなど特産品を生かした品々が。いずれも良い素材を無駄にせずに用い、手間をかけた心尽くしの料理が特徴。「精進料理は究極のスローフード」と言う著者の気持ちが伝わってくる本だ」。

侍女

2003 年 5 月 25 日 日曜日

『侍女』表紙\
書籍名   : 侍女 エリザベス・B・ブラウニングに仕えた女性
(ジジョ)
著者名   : マーガレット・フォースター(マーガレット・フォースター) 著
翻訳工房りぶろ(ホンヤクコウボウリブロ) 訳
発行日   : 2003-04-24
税込価格 : ¥3675
本体価格 : ¥3500
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★『産経新聞』5月25日
「ともに英国の代表的詩人であるロバート・ブラウニングとエリザべス・バレット夫妻。二人に仕えた実在の女性をモデルに、その数奇な運命を描いた歴史小説である。ビクトリア朝のロンドン。二十\三歳のウィルソンは、エリザべスのメイドとしてバレット家で働き始めた。誠実で勤勉なウィルソ\ンは、病弱な女主人に献身的に仕え、信頼を得ていく。エリザべスからブラウニングとの駆け落ちの計画を打ち明けられた彼女は、ためらわずイタリアに同行する。異国の地で夫妻を支えるウィルソンだが、世間知らずの夫妻に振り回されて自分の幸福を犠牲にしてきたことに、次第に疑問を持ち始める。閉鎖的な階級社会の中で、自我に目覚めていく女性の姿を端正な筆致で映し出した物語」

狂女王フアナ

2003 年 5 月 17 日 土曜日

『狂女王フアナ』表紙\
書籍名   : 狂女王フアナ スペイン王家の伝説を訪ねて
(キョウジョウオウフアナ)
著者名   : 西川和子(ニシカワカズコ) 著
発行日   : 2003-02-25
税込価格 : ¥2100
本体価格 : ¥2000
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★「週刊東洋経済」5・17号
「スペインの国王には、面白い、というか、不名誉なあだ名が付けられる場合がある。本書の主人公、「フアナ・ラ・ロカ」も、その一人。「狂女王フアナ」ということになる。
フアナは、15世紀末にスペイン統一を果たしたカトリック両王の次女で姉と兄の早世によってスペイン王位を継ぐが、女性問題の絶えない夫のフィリップ美男王への嫉妬が昂じて精神に異常をきたす。夫の死後、遺体を棺の中に入れて、スペイン中央部カスティーリャの曠野を二年間も彷徨っていた。そして、毎晩棺の蓋を臣下に開けさせて、夫の身体を愛撫していたという。その後、彼女の父親によって、死ぬまで49年間も幽閉される。果たして、フアナはこの通りの人生だったのか。本書はこの謎の部分を鋭く分析している」。

★「東京新聞・中日新聞」4/3夕刊、??今週の本棚??
「愛する夫の遺体とともに、2年あまりカスティーリャの荒れ地をさまよった後、29歳で幽閉されたまま、75歳で生涯を閉じたという女王フアナ。偉大なるイサベル女王の美貌の娘にフランドルの王妃、また「日没なき帝国」を築いたカルロス一世の母でもあった彼女の数奇な運命は。不名誉な形容を冠されるも、スペインの人々が共感を寄せる一途な魂の軌跡がよき語り手を得て鮮やかによみがえる」

よろしく、うつ病

2003 年 5 月 5 日 月曜日

『よろしく、うつ病』表紙\
書籍名   : よろしく、うつ病 闘病者からの「いのちがけ」のメッセージ
(ヨロシクウツビョウ)
著者名   : 覚慶悟(カクケイゴ) 著
発行日   : 2003-03-17
税込価格 : ¥1470
本体価格 : ¥1400
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★『ダ・ヴィンチ』03年6月号

いまや現代日本人の国民病という観すら呈してきたうつ病。急増する自殺者のほとんども、「衝動的」な決行ではなく、うつ傾向がその背景にあるとされる。マスコミ情報などではなかなか理解されにくいうつ病を、自殺未遂まで経験した著者が闘病過程を含めて明かす。

★『東京新聞』『中日新聞』03年5月18日
(覚 慶悟著 1400円 03年3月刊)「うつ病になり四年以上。何よりも同じ病に苦しむ患者の体験が知りたかったという著者が、自らの自殺未遂、家族との葛藤、闘病の過程を素直につづる。完治は難しいが共棲をはかっていきたいという言葉は、マスコミや専門家の「うつ病は心の風邪のようなもの」といった安易な発言よりも闘病者の心に届くだろう。友人や家族がどのように患者を思いやり、接したらいいかの手引きにもなる」

★『毎日新聞』03年5月5日
東京都内に住む覚慶悟さん(43)が、うつ病を意識したのは5年前の夏。……「生きていることがつらく、この世から消えてしまいたい」と思いつめるようになり、抗うつ薬を飲み始めた。しかし、「生きているのが申し訳ない」との思いは募るばかり。01年正月、大量の薬を一度に飲んで自殺を図った。
覚さんは命をとりとめ、1カ月半入院した。今も抗うつ薬を飲んでいるが、福祉関係の職場に復帰した。自殺未遂を「ばかなまね」と思えるようにもなった。……
覚さんは今年3月、自らの闘病記「よろしく、うつ病」を出版した。覚さんは「生きることが死ぬよりつらく、だれにも理解してもらえない絶望を味わった。そんな体験をした患者の一人として、うつ病への理解を訴えたい」と話す。

老いをケアする仕事がしたい!

2003 年 5 月 1 日 木曜日

『老いをケアする仕事がしたい!』表紙\
書籍名   : オフサイド・ブックス25
老いをケアする仕事がしたい!
本音で選ぶ高齢化社会の資格と仕事
(オイヲケアスルシゴトガシタイ)
著者名   : 斉藤弘子(サイトウヒロコ) 著
発行日   : 2003-02-19
税込価格 : ¥1575
本体価格 : ¥1500
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★『介護保険情報』03.5
本書は、今後、社会的ニーズがますます高まっていくと考えられる老いをケアする仕事・資格などについてガイドしたものである。

しかし、これまでのガイド本と異なるのは、若い世代を中心とした、新規に資格をとって仕事につこうとする人たちだけでなく、リストラなどによる中高年の方向転換、主婦の再就職も含め、転職して老いをケアする仕事にチャレンジする人たちも対象としてる点である。
そのせいか、例えば「健康生きがいアドバイザー」「生涯学習インストラクター」など幅広い分野の仕事などの情報も手厚い。
すでに資格を持っている人が自分の知識の幅を広げたり、キャリアアップしたいときにも役立ちそうである。

西郷と横山安武

2003 年 4 月 19 日 土曜日

『西郷と横山安武』表紙\
書籍名   : 西郷と横山安武 明治維新の光芒
(サイゴウトヨコヤマヤスタケ)
著者名   : 清水昭三(シミズショウゾウ) 著
発行日   : 2002-12-25
税込価格 : ¥1995
本体価格 : ¥1900
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★「図書新聞」03.4.19

(清水昭三著 1900円 03年1月刊)「安武は鹿児島藩士森有恕の四男として生まれた。弟の有礼が家を継ぎ、後の文部大臣森有礼となる。なぜ末子が、と思うだろうが、長男有秀は禁門の変の戦陣で没し、次男喜八郎は青山家の養子となったが26歳で病死、安武も横山家の養子となり、家をでていた。有礼だけが森家に残ったのだ。安武は薩摩藩校造士館を首席で卒業、藩主の弟忠経の補導役に抜擢され、ともに佐賀弘道館、山口明倫館に学ぶが、職を免じられて上京する。明治3年7月、明治政府の混迷と世情の不穏に危機感を抱き、建白書を起草、添書として征韓および蝦夷(北海道)開拓の不当を批判、衆議院門扉にかかげて、自刃する。28歳だった。横山安武の平和思想は薩英戦争を目撃したからである。外国をいたずらに非難するのではなく、外交交渉によって局面を打開すべきであるとの所論は、陽明学を学んだ彼が広い視野をもった人物であったことを物語る」

★山梨日日新聞・田所泉
「明治3年の7月、東京の「集議所」に建白書を提出したあと、近所の路上で割腹自殺した男がいた。男の名は横山安武、ときに28歳、薩摩出身、のちの初代文部大臣、森有礼の実兄である。建白書は十ヵ条、政治家や官僚の腐敗を糾弾し、外交・内政の失政を批判したものだが、割腹はむろん異例である。著者はこれを「抗議の諫死」とみて、添付されていた文書に記さた「征韓論」批判に着目し、横山・森兄弟の生涯の事績と、同僚の先輩・西郷隆盛との交友を織り交ぜて、評伝ふうの小説にした」。

エストニア国家の形成

2003 年 4 月 15 日 火曜日

『エストニア国家の形成』表紙\
書籍名   : エストニア国家の形成 小国の独立課程と国際関係
(エストニアコッカノケイセイ)
著者名   : 大中真(オオナカマコト) 著
発行日   : 2003-04-03
税込価格 : ¥3150
本体価格 : ¥3000
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★ユーラシア・ウォッチEurasia Watch(編集・発行:秋野豊ユーラシア基金 http://www.akinoyutaka.org)第18号 2003年4月15日

本書の隠れたテーマは民族自決権である。今日、バルト諸国の一つとして数えられているエストニアは、1918年に独立するまで国家としての経験を持つことはなかった。本書は20世紀初頭の国際政治、とりわけ英・米・ロといった大国による民族自決権の取り扱いと、国際政治のアクターとしての黎明期エストニア(と同国の外交官)の動向について分析する。ウィルソンやレーニンといった、当時の代表\\的「民族自決権」論者が、小民族の自治権を認めたとしても、その独立することを想定していなかった中で、エストニアはいかにして国家を形成することができたのか。パリ講和会議やソヴィエト政権との平和条約の締結をクライマックスとする過程を、本書は専門書ながら大変ドラマチックに描いている。
また、読者はほどなくして、小民族の自決権が現代の国際政治にも通じる問題であることを理解するであろう。国家を持たない民族が、現実の政治において自決権を認められないながらも、より有利な立場を獲得しようとする姿は、今日のクルド人やチェチェン人などを想起させる。民族自決権は現代国際政治のジレンマの要因の一つであり、著者はその起源がエストニアをはじめとする第一次世界大戦後の処理にあることを示唆している。     (湯浅 剛)

臨床文学論

2003 年 4 月 4 日 金曜日

『臨床文学論』表紙\
書籍名   : 臨床文学論 川端康成から吉本ばななまで
(リンショウブンガクロン)
著者名   : 近藤祐子(コンドウヒロコ) 著
発行日   : 2003-02-05
税込価格 : ¥2310
本体価格 : ¥2200
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★「読書人」4/4、中村三春
「病いとしての〈わたし〉〈わたし〉という病い「臨床と批評の出会う地平」と、帯には銘打たれている。川端、ばなな、春樹、山本昌代、尾崎翠らの小説に登場する〈わたし〉の様相を追究するために、木村敏、中井久夫、河合隼雄、市川浩らの、精神病理学や心理療法論などを援用し、臨床的であり、かつ文芸批評でもあろうとする緊張感溢れる論述が展開される。とはいえ、小説家の精神分析、もしくは病跡学などという陳腐な方向性を著者はとらない。「病いが描き出した人間像をモデルに思考を深めるということは、作者に病名を与え病理との因果関係において作品を解釈することでも、虚構の人物達に病名というレッテルを貼\り、病理の枠組みによって全てを説明しようとすることでもない。[…]病いとは、既成の目我の概念では説明できないテクストの〈わたし〉を、より柔軟に捉えてゆくための補助線であるべきではないか」とする言葉が、著者の立場をよく伝えている。あくまでも、自我分析、〈わたし〉論としてのみ、本書における「臨床」の標的は定められてゆく。と同時に、ばなな、山本、翠と、本書の申核を占める作家論は女性の書き手に捧げられ、川端、春樹に対しては批判的であることも見逃せない。…(本書は)一般論を超えて、「家族の解体」「共同性の喪失」以後の現代の若者が抱える心の病に対応しようとする、真摯なスタンスを示して心に迫る。

★朝日新聞 3/9、池上俊一評
「「臨床」が流行っている。古株の臨床心理学の傍らに、近年、臨床教育学と臨床哲学が芽生え、そして今、臨床文学の種が播かれた。病める現代日本において<わたし>が溶解してゆく危機の諸相を、ぎりぎりの言葉で表現する現代作家たち。彼らの特異な訴えに注意深く耳を傾け、「時代の病」へと開いてわたしたちに仲介する姿は、託宣をする巫女のようだ。身体で世界を分節する「身分け」と言葉で世界に文目をつける「言分け」、双方を視野に収めた鋭利で繊細な批評の言柴で、苦悩の現場と関係を結び、そこに深い意味を見出してゆく作法が、臨床の臨床たるゆえんだろう。
川端康成、尾崎翠、村上春樹、山本昌代、吉本ばなな、彼らは皆、身体と感覚をめぐる不思議で異様な語りが急所を縫いとる織り糸となる作品を書いている。対象の生命力を奪いとり物化する視線、<わたし>の匂いの世界への漏洩、カウンセリングの仮面の下での心病む人ヘの裏切り、なにげない家族の日常に横たわる世界全体から<わたし>を引き裂く溝、ふんだんな料理の脇を流れる死に近接した時間……。こうした<わたし>の病状の意味を、作品中の巧んだ語り口の仕掛けに探るべく、著者は、特徴的な言葉の用法、語りのねじれ、ひいては語り手の意識に着眼し、考察を重ねてゆく。たとえば吉本ばななの『キッチン』では、冒頭の「私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う」の一文に拘泥するとともに、「ふと」「ふいに」「突然」という言葉の多用と移行を分析する。山本昌代の家族小説においては、登場人物たちを捉えては脅かす非人称の声を解釈のひとつの鍵とする、といった具合だ。
だが症候の分析といっても、帰着点があらかじめ決まっている不毛な精神分析批評とはまるきり違う。言葉の用法に徹底的にこだわりながらも、テクストの構造分析のような内在分析に終始することもない。自らの体験を通じて理論を咀嚼し、自前の方法で作品に係わっているからこそ、読者もスリリングな読みに誘い込まれるのだろう。臨床文学、大樹に育つのも遠い将来のことではあるまい」。