書評・広告掲載本

最新の記事5件

このコーナー内を検索

月別一覧

ジャポニズム小説の世界

2005 年 2 月 27 日 日曜日

『ジャポニズム小説の世界』表紙\
書籍名   : ジャポニズム小説の世界 アメリカ編
(ジャポニズムショウセツノセカイ)
著者名   : 羽田美也子(ハダミヤコ) 著
発行日   : 2005-02-10
税込価格 : ¥3150
本体価格 : ¥3000
画像をクリックすると紹介文が読めます(注文もできます)。

★毎日新聞 2.27、張 競
「ジャポニズムについでは美術表象との関連で議論されることが多い。だが、欧米の日本趣味は何も美術品に限られたわけではない。ピエール・ロティ『お菊さん』に代表されるように、文学作品も多く書かれていた。しかし、数人を除いて、全体像はほとんど知られていない。著者はそのことに着目し、美術における想像力の往還だけでなく、文学による日本表\象もジャポニズム運動の一環としてとらえた。アメリカ文学に限定したのは考察範囲を特定するほか、ヨーロツパとの比較にも役立った。ジャポニズム研究は異文化交渉の側面に片寄りがちだが、本書の面白いところは、ジャポニズム小説が流行する起因について、アメリカ文化の角度から検討を行ったことだ。19世紀前半のアメリカはヨーロッパよりも識字率が高く、読者の九割を大衆が占めていた。また、「国民」を育てる「母」として、女性にも早くから教育の機会が与えられた。1830年代になると、印刷の機械化によって書物の大量生産が実現し、40年代には早くも廉価本革命が起きた。小説が大衆的娯楽として一大市場を形成するなか、女性はたんに読者ではなく、作家になる道も開かれた。小説を書くことは経済的な利益をもたらした。おりしも、日本に対する大衆的な関心が高まり、この東洋の国を舞台に小説を書けば、商業的に成功する可能性が高い。ジャポニズム小説が流行する背景にはそうした非文学的な要因も介在していた。60年代以降、アメリカでも文学史の読み直しが行われたが、本書はこの問題についてアメリカ人も気付かない視点を示した。ジャポニズム小説を新たに類別し、批評することは、比較文学的な意義のみならず、アメリカの近代精神史を考える上でもヒントになるであろう。『蝶々夫人』の作家ジョン・ルーサー・ロングをはじめ、オノト・ワタンナ、メアリー・フェノロサ、フランセス・リトルなどについては伝記的事実のほか、おもな作品の粗筋が詳細に紹介されていて面自い。翻訳がほとんどなく、原書も入手しにくい現在、資料としても手元に置きたい一冊だ」。

新選組多摩党の虚実

2005 年 2 月 12 日 土曜日

『新選組多摩党の虚実』表紙\
書籍名   : 新選組多摩党の虚実 土方歳三・日野宿・佐藤彦五郎
(シンセングミタマトウノキョジツ)
著者名   : 神津陽(コウズアキラ) 著
発行日   : 2004-09-15
税込価格 : ¥1890
本体価格 : ¥1800
画像をクリックすると紹介文が読めます(注文もできます)。

★図書新聞 05.2.12 久保隆

「神津陽の新著だ。神津が長らく日野市に在住していたのを本書ではじめて知った。神津にとって、〈新選組〉は近接したモチーフだったということになる。ところで、わたし(たち)にとって、神津陽という名は、三十数年前、第二次共産主義者同盟叛旗派のイデオローグとして知られている。叛旗派の前身は、共産主義者同盟・三多摩地区委員会であった。いまにして思えば、「多摩」という照合がすでにあったことになる。強い関心をもって本書を読んだ。わたしの気負った視線を外すかのように、神津の筆致は淡々と〈新選組〉の出自と暗部に分け入っていく。一見、郷土史的スタイルを採りながらも、そこには、なるほど神津陽ならではと思わせる論及が散見される。例えば、こんな箇所だ。「新選組についてまとめるに当り、新選組ブームに仮託された今の庶民の為政者への怨念や圧殺された抵抗者へ同調する心の振幅をこそ掘り下げたい。つまり私は為政者には目障りな、現在の政治的無関心や非政治的構\\えの全容を正面から扱いたいのである。(略)ここで問題とする新選組への根本的な〈謎〉は、大多数の新選組ファンに無視されても、特攻隊と同様に組合運動や全共闘などに遭遇し関わらぜるを得なかった経験を持つ、行動的批判者の心情には届くかも知れない。なぜ多摩では百姓の剣術修行が容認されたのか、なぜ新選組は連合赤軍のリンチを思わせる内部粛清を重ね暴力集団として純化したのか、なぜ農家の穀漬し連中が盛名のある浪人連中に対して指導権を握れたのか、なぜ敗北必至の戦闘への転戦を選んだのか等の考察は、未だに不明確な各自の抱える歴史の闇を解く糸口となるかも知れないからだ」」。

ジプシー差別の歴史と構造

2005 年 2 月 6 日 日曜日

『ジプシー差別の歴史と構造』表\紙
書籍名   : ジプシー差別の歴史と構造 パーリア・シンドローム
(ジプシーサベツノレキシトコウゾウ )
著者名   : イアン・ハンコック(イアンハンコック) 著
水谷驍(ミズタニ タケシ) 訳
発行日   : 2005-01-25
税込価格 : ¥2940
本体価格 : ¥2800
画像をクリックすると紹介文が読めます(注文もできます)。

★北海道新聞、3.13、織田淳太郎

「「人」を意味するロマ、その民族的総称としてロマニは、インド北部を起源とする単一民族とされているが、著者によると、西暦800年以降に西方への移動を開始して、1100年ごろヨーロッパに流れ着いたといとう。パーリア(社会ののけ者)としてのロマニの悲劇的歴史の第一歩は、ここから始まる。ギリシャ語から派生した異教徒を意味する別称や、エジプト人へのぶべつ感を込めた「ジプシー」という言葉が、いつしか彼らの統一的な呼称となった事実は、このことを雄弁に物語っている。十四世紀から十\\九世紀にかけてのルーマニアでは、「ジプシー奴隷制」を敷き、競り市などでの売買を公然と行った。ナチスドイツは、ロマニをユダヤ人同様「遺伝的に汚染された存在」と定義。50万人がホロコーストの犠牲になったとされているが、著者によるとこの数字は「あまりにも小さくて擁護できない」という。ジプシーの「流浪の民」という牧歌的なイメージは、非ジプシー側の一方的な視点によって植え付けられてきた。「盗みはジプシーの習性」とする観念もまた、同様である。ロマニ出身のロマニ解放運動家の手による本書は、彼らの実像を正確に伝えており、人間社会に深く沈殿する「適者生存主義」の愚劣さを容赦なくあぶり出している」

★共同通信配信、各地方紙
「今では「ロマ」と呼ばれることが多い民族の知られざる抑圧の歴史。自身がロマである言語学者が、差別が再生産される欧米の社会構造に分け入って、冷静に告発する。五世紀にわたって奴隷制下に置かれた歴史。ロマ版ホロコースト「ポライモス」。「ロマンチックな流浪の民」というイメージや「所有という言葉がない」など事実無根の言説─。こうした事象の背景にある、社会の外縁としての「他者」を必要とした差別側の論理を鋭く分析する」

★「東京新聞」「中日新聞」05.2.6
「アメリカ在住のロマニ=ジプシーである著者が、ロマニ迫害の歴史と差別の現実を、深い憤りを込めて告発する論考集。ルーマニアでは十九世紀半ばまで、五百年にもわたって奴隷にされ、ナチス・ドイツの収容所では五十\万人以上が処分されたという。その後も今に至るまで欧米での迫害は続く。彼らはどうしてこうした窮状に陥ったのかを、歴史的、社会心理学的に検討する」。

ファンタジーのつくり方

2005 年 2 月 1 日 火曜日

『ファンタジーのつくり方』表紙\
書籍名   : オフサイド・ブックス37
ファンタジーのつくり方
エンターティンメントを創造するためのマニュアル
(ファンタジーノツクリカタ )
著者名   : 中村一朗(ナカムライチロウ) 著
発行日   : 2004-12-01
税込価格 : ¥1680
本体価格 : ¥1600
画像をクリックすると紹介文が読めます(注文もできます)。

★『テレビステーション』05年2月号
「ファンタジーを徹底分析! 小説、映画、ゲームソフトなどのメディアによる想像上の物語すべてを??ファンタジー?≠ニとらえ、系統化したサブカル本。鉄腕アトムからハリー・ポッターまで、ヒットを飛ばした??ファンタジー?≠?例に挙げ検証し、モノを創る楽しみを提唱している。ウンチク本としても◎」。

写真で歩く世界の町並み

2005 年 1 月 12 日 水曜日

『写真で歩く世界の町並み』表紙\
書籍名   : 写真で歩く世界の町並み
(シャシンデアルクセカイノマチナミ)
著者名   : 高士宗明(タカシムネアキ) 著
発行日   : 2004-09-20
税込価格 : ¥2625
本体価格 : ¥2500
画像をクリックすると紹介文が読めます(注文もできます)。

★朝日新聞名古屋版 05.1.12

「”町並み保存”という言葉は、いま定着し、公共事業として整備されている。だが、数少ない人たちが危機感を持って20年来取り組んできたからこその日本の”町並み保存”でもあるのだ。筆者は三重県四日市市の医師。60歳で自主的に「定年」を宣言。町並み保存運動に以後の人生を重ねてきた。日本編に関してはすでに著書が出ている。そのかたわら世界各地でも取材を続けてきた。スペインをべースに世界への旅を続け、本書では103都市を紹介している。76年以降約30年の蓄積だ。人類は今、残すに値する町並みを作ることができるのか。「否。もう作ることは出来ない」という断念の思いが本書を貫く。著者が撮影した町並みの美しさが印象的だ。それに比べて「現代建築はこけおどし」と著者は言い切る。観光情報も豊富で実用書としても使える」。

ジャズ選曲指南

2005 年 1 月 1 日 土曜日

『ジャズ選曲指南』表紙\
書籍名   : ジャズ選曲指南 秘伝「アルバム4枚セット」聴き
(ジャズセンキョクシナン )
著者名   : 後藤雅洋(ゴトウマサヒロ) 著
発行日   : 2004-11-25
税込価格 : ¥1680
本体価格 : ¥1600
画像をクリックすると紹介文が読めます(注文もできます)。

★「CDジャーナル」05年2月号

「ジャズ喫茶〈いーぐる〉店主の新著は、アルバム4枚1セットの鑑賞方式を提案する、いまだかつてないガイドだ。〈いーぐる〉では1枚から約20分(LPでは片面に相当)流し、考え抜かれた順番でそれを4枚繋げて1単位とする選曲システムをとっている。客は飽きないし、ジャズの奥深さも十分味わえるというのが理由だそうで、そのような店の〈知恵〉を惜しげもなく本書で披露した。ジャズ喫茶の空間が今でいうDJ的な感性で演出されていることを再認識」。

★「ジャズ批評」 2005年1月号
「ヒット中の『さわりで覚えるジャズ』(中経出版)、中山康樹・村井康司氏との一連の宝島社ムックなど、どちらかというと監修者としての仕事が続いた後藤雅洋が、久々にソロ作を発表\。門外不出の「いーぐる選曲ノート」を基に、ジャズ喫茶の名盤を、これまでの名盤ガイドとは努めてダブらぬように紹介。《K竏窒Pも真っ青! 稀にみる立ち技の応酬》、《前田対アンドレを彷彿、これぞまさにセメント・マッチ》など、見出しにも格闘技を愛し、柔道や空手にいそしみ、力道山の生も体験した著者ならではの男気があふれる。ゴッチイズムならぬ「後藤イズム」にあふれた力強い一冊だ」。

グレアム・グリーン文学事典

2004 年 11 月 20 日 土曜日

『グレアム・グリーン文学事典』表紙\
書籍名   : グレアム・グリーン文学事典
(グレアムグリーンブンガクジテン)
著者名   : 山形和美(ヤマガタカズミ) 編集・監修
発行日   : 2004-09-20
税込価格 : ¥12600
本体価格 : ¥12000
画像をクリックすると紹介文が読めます(注文もできます)。

★図書新聞 11.20 田村一男・白百合女子大学教授

「グレアム・グリーンは1929年の『内なる人』をもって小説家として知られるようになり、1990年の『最後の言葉とその他』によって作家生活にピリオドを打った。この60年を越える年月にわたってなされた文業上の仕事は、長・中・短編の小説作品をはじめ、戯曲、エッセイ、評論、紀行文、自伝、伝記、回想録、さらには対談集や子供向けの読み物に至るまで、幅広く文芸の領域をカバーし、それと同時に数多くの著作物を世に送り出すこととなった。そしてこれら「グリーンの文学的全作業」をグリーンの没後13年にして生誕100年に当たるこの年に刊行されたのが、600頁を越える大冊となった本書なのである。本事典は、著作一覧・年譜・グリーンの生涯・グリーン文学の魅力・著作・重要概念項目・関係事項項目・関係人物項目・著作目録・参考文献(外国と日本)から成っていて、全体の構成は三つにまとめることができる。即ち、グリーンという作家を鳥瞰的に眺めた「グリーンの生涯」と「グリーン文学の魅力」、虫瞰的に捕らえた「著作」、そしてこれらの遠景と近景の中を迷うことなく歩くために必要な道標に相当する「重要概念項目」以下の項目の三つである。「グリーンの生涯」は、一味違った‘こく’と風味豊かな評伝となっており、「グリーン文学の魅力」はエズラ・パウンドに始まりエリオットで終わる展開の中に、シェイクスピアヘの言及も加味され、グリーンの文学の魅力が巨視的観点から述べられている。本事典の中核を成す「著作」の部は、300頁以上にも及び、習作から伝記に至るまで11の細目から構成されている。特にA「習作時代」C「長編・中編小説」D「短編・短編集」E「戯曲」F「児童向け物語」には「あらすじ」と「解説」が付けられている。「解説」はどれを読んでも巧みにまとめられていて、研究文献からの言説も適宜引用されており、この作家に接するあらゆるレベルの愛好者の要求を満たしてくれるものになっている。グリーンの小説作品の八割以上が映画化、もしくはTV化されていることを知り、驚きを新たにした。「重要概念項目」とそれに続く二つの「項目」は、グリーンの著作をより正確に、またより豊かに読み解く上でなくてはならない部分である。特に「重要概念項目」は、グリーンと同じカトリックの信仰を共有する者の人口が1%にも満たない日本にあってはなおさらである。ここには「愛の祈り」から「憐憫」まで44の項目が採られており、それらは単に字義の定義にのみ終始する辞典の類とは異なり、その概念が、作品世界を構築する上でどの様に機能\しているか、といった点を重視しての記述となっている。したがってその説明は、具体的作品に基づいてなされており、ある意味でグリーンのコンコーダンス的役割を果たしていると言うことができるであろう。本事典はグリーンを読む者を、その親しんでいる度合いに応じて受け入れてくれる許容度の大きい事典である。これまで彼の作品に点としてしか触れていなかった者でも、これを読み進むことにより、その点を足場としてどの方向に向かえば点が線となって延び、さらに面となって広がっていくか、その方向を見出すことができる。したがって本事典は引いて終わりにする類のものではなく、そこから始めるための刺激とヒントを得るための事典でもある。これをナビゲーターとして、私達は〈グリーンランド〉を安全に旅することができるようになったことに感謝したい」。

ラフカディオ・ハーンの思想と文学

2004 年 11 月 3 日 水曜日

『ラフカディオ・ハーンの思想と文学』表紙\
書籍名   : ラフカディオ・ハーンの思想と文学
(ラフカディオハーンノシソウトブンガク)
著者名   : 大東 俊一(ダイトウ シュンイチ) 著
発行日   : 2004-09-15
税込価格 : ¥2310
本体価格 : ¥2200
画像をクリックすると紹介文が読めます(注文もできます)。

★『ダカーポ』04.11.3号

「今年はラフカディオ・ハーン=小泉八雲の没後100年にあたり、さまざまな催しを通じてその再評価の機運がめざましい。まさにくめども尽きぬ泉のように、ハーンは魅力に富んでいる。本書では、ギリシャの小島で生まれ流転ののちに日本にたどり着いたハーンが、明治の日本に魅了された姿が思想史的な解説のもとに解析されている。当時の日本人の暮らしの中に息づく宗教心と道徳を、宇宙的な生命の進化史の中で了解するハーンの営みを鮮やかに描き出していて、小著にして好著。

自然と文学のダイアローグ

2004 年 9 月 25 日 土曜日

『自然と文学のダイアローグ』表紙\
書籍名   : 自然と文学のダイアローグ
国際シンポジウム沖縄2003…都市・田園・野生
(シゼントブンガクノダイアローグ )
著者名   : 山里 勝己、高田 賢一ほか
(ヤマザトカツノリ、タカダケンイチ) 編
発行日   : 2004-09-15
税込価格 : ¥2940
本体価格 : ¥2800
画像をクリックすると紹介文が読めます(注文もできます)。

★「沖縄タイムス」04..25 岡本恵徳
「アメリカの詩人ゲーリー・スナイダーをメーンゲストに韓国、台湾、日本の優れた詩人や作家、研究者を招いて、琉球大学で開かれた〈ASLE-Japan/文学・環境学会〉主催の国際シンポジウム「自然─都市、田園、野生」の記録が本書である。さまざまな議論をまとめた本書には、それだけに文学や環境問題についての興味深い発言が多数見られるが、ここでは評者の印象に残った二、三を取り上げることで書評に代えたい。その一つは、「環境文学研究」が手付かずの「原生自然」に留まらず「都市の自然」や「田園」にまで視野を広げているという指摘と、そのことと関連するカレン・コリガン=テイラーの「レフュージ」(安らぎの場)を見直そうとする発言であった。また、スコット・スロウィックの紹介した「感覚のエコロジー」や崎山多美の発言は、それぞれ文学を考える上で示唆に富むと思う。これらの詳細については本書を手にとって貰うしかないが、中でもとりわけ印象に残ったのは、森崎和江も言及したが、山城新の「環境正義」(この語句にはいささか違和感がある)という言葉を「語り」の問題とかかわらせる発言であった。そこで山城新は、安里清信の金武湾反CTS闘争の記録『海はひとの母である』を取り上げて、その語りが「複数」であることに「金武湾の闘いを多元化しよう」とする試みを読み取り、「環境問題だけではなくそれを語る環境言説の類型化を避け、極めてラディカルな形で環境をめぐる言説の再編成を試みている」と指摘する。これは例えば、映像の面での比嘉豊光や村山文江たちの試み「島クトゥバで語る戦世」に通底する重要な指摘として興味深い。今沖蝿は、辺野古沖への米軍基地建設や泡瀬干潟埋め立て問題など多くの自然破壊の危機を抱えている。その時期に人と自然とのかかわりを根元から考える本書が公刊されたことの意味は極めて大きい」。

越境するトポス

2004 年 9 月 3 日 金曜日

『越境するトポス』表紙\
書籍名   : 越境するトポス 環境文学論序説
(エッキョウスルトポス)
著者名   : 野田研一、結城正美(ノダケンイチ、ユウキマサミ) 編
発行日   : 2004-07-31
税込価格 : ¥4725
本体価格 : ¥4500
画像をクリックすると紹介文が読めます(注文もできます)。

★英語青年 05年1月号 笹田直人
「本書は、ネイチャーライティングやエコクリティシズムなど、日本での「環境文学研究」のさらなる展開をめざして編まれた論文集である。…野田氏は「序」で吾国の環境文学研究が第二段階にさしかかっていると指摘し、「ジャンル論としても文学理論としても輸入品の域を出なかった諸要素を、真に日本における文学ジャンル、文学研究の方法論として定着させる」こと、この分野の作品を「享受できる読者層を見いだし、息の長いジャンルとして日本的に成熟させる」ことの必要性を熱く静かに説く。実際、この論集の扱う作家のうち、生田論文が三木卓・石牟孔道子・内山節、野田論文が藤原新也、小谷論文が林京子、山里論文が宮沢賢治、結城論文が石牟礼、高田論文が戸川幸夫・宮沢、山城論文が柳田国男・森崎和江・堀江謙一、アレン論文が石牟礼という具合に、半数以上が日本の作品を検討している。いずれも、アメリカ文学との比較文学的視座に立ちつつ、「場所の感覚」「人間中心主義批判」など環境文学研究の核を成す主要な批評題目から読み親しんだ日本文学に新しい光をあてており、新鮮な読みと日米文学の喜ばしい邂逅へと読者を導いてくれるだろう。「トポス」とは、定型の表現形態の謂いでもあるが、また引き出されるべき表\\現の隠された場所の謂いでもある。本書は、『越境するトポス』という書名に相応しく、そうした場所を求め種々のディスプリンを越境する真率な探求の書である」。

★週刊読書人 9/3

「伝統的な文学研究では主題はもっぱら文明社会における人間存在の意義に終始してきた。そのようなアプローチでは現在進行しつつある環境危機には対処できない。環境危機は文明や文化の危機であり、同時に私たち人間性の危機でもある。というのも地球上に住むただ一つの種にすぎないホモサピエンスの、倣慢ともいえる営みがその大きな要因であるからだ。環境文学は従来の文学研究の反省に立ち、自然や環境の視点から私たちの文明の質を問い、私たちの生き方を問い直す。日本に紹介されてまだ10年余り、若い文学研究の分野である。環境文学という場合、一般的に知られているネイチャーライティング(人間と自然をめぐるノンフィクション、エッセイ)に小説、詩、演劇をも合むジャンルを指す。本書の意義を「場所の感覚」、「日本文学へのアプローチ」、「アメリカ人研究者の寄稿」という観点から紹介したい。本書には十三の論考が収められているが、そのほとんどが「場所の感覚」に関するものであることに注目したい。場所の感覚とは、「場所」についての意識をいっそう深化させたもので、場所を生態系ばかりか歴史や文化をも含めた複合体として捉え、そこの共同体の一員として根づくことによって初めてアイデンティティが確認されるという考え方である。アメリカ文学で言えば、ソ\ローの『森の生活(ウォールデン)』がその原型となり、日本文学で言えば、石牟礼道子の『苦海浄土―わが水俣病』は、逆に愛すべき場所が高度成長とともに崩壊していった遇程を描いている。本書の執筆陣の顔ぶれから、英米文学論が予\想されたが、タイトル『越境するトポス』(トポス=自然をめぐる言説)にあるように、トポスは各地、各領域に越境する。執筆陣自身が自らの文学研究を越境し、日本文学の読み直しを強く迫っているのが本書の特徴である。その対象は野尻抱影、三木卓、石牟礼道子、内山節、藤原新也、林京子、宮沢賢治、戸川幸夫等、実に多彩だ。そこにアメリカの作家ミューア、ステグナー、スナイダー、テリー・テンペスト・ウィリアムス、スコット・ラッセル・サンダーズ、ゲーリー・ポール・ナブハンが入り混じり、さらに海洋文学と動物文学に関する論考が加わって、一大「環境文学論序説」が展開する。アメリカ人研究者の寄稿はどれもそつなくまとまりがある。特にスロヴィックの「Xのなめらかな表皮をめくると」は、サンダースやナブハンのもつグローバリズムの間題点を分析したものである。アメリカではグローバリズムまでもが文学研究の対象となっていることに驚かされる。本書に関心をもたれた方に、次のような環境文学からのメッセージを紹介しよう。「自分がどこにいるかを知らなければ、自分が誰であるかわからない。」「私たちは場所を語る語彙をもっとゆたかにしなければならない。」あるシカゴの動物園の出口には、大きな姿見の鏡が掛っている。その上に「今あなたが見ているのは、地球上で最も凶暴\な動物です」と書かれている。環境文学研究が必要とされる時代が到来したようだ。」