耳にコバン ちょっとためになるボク的ロックンロール通信 第3回

第3回 あなたの心のワンダーウォール

コバン・ミヤガワ

「飽きっぽい」性格の自分に飽きている気がする。

「飽きっぽい」性格のくせして、一度火が付いた情熱を、ある程度まで燃え上がらせないと気が済まない。何でもかんでもすぐにのめり込み、のめり込みすぎるあまり「ヤツはおかしい」と周りに言われる始末。かと思えば、しばらく経つとケロッとしているのだから、これがあんまり良くない性格だと思っていた。

例えば「健康じゃ! 大切なものは健康じゃ!」と突然思い立ち、意気揚々と数種類のサプリメントを飲み始めた時期があった(まぁ、そもそも不摂生ではあったが、決して体調が悪かったわけでも何でもない)。しかし、買い漁ったサプリメントがなくなる頃には「別に飲まずにいたって死なないじゃないか。いいじゃないか」と心で誰かが言っていた。

「死なない」というパワーワードを使った、非常に浅く、小学生の屁理屈みたいな理由で、ボクの「サプリメントで健康生活」は幕を閉じた。何と愚かなことか。

しかしある時、飽き性のボクは気が付いた。「飽きっぽい」自分に、心のどこかで飽きている自分がいるのだ。

何かに対して熱が冷めてしまった自分に「こういうの、もう飽きた」と思っている自分がいるのだ。ハッとした。「飽き」に「飽き」が重なっている。いわば「飽きの二乗」だ。これはマズい。このままでは何も新しいことを始めない人間になってしまうぞ! ダメでしょこれは!

「何かを始める」ということに大きな意義があり、多かれ少なかれ何か得るものがあるはずなのだ。それすらも放棄してしまったら、何の面白みもない日々を送ることになってしまうぞ!

だったら何でもやってみた方がいいじゃないか。まず何かを始めなければ、飽きることすら許されないのだ。
飽き性上等だ。

 

そんなこんなで、中学時代に出会って熱を上げた音楽も、高校時代に何となく描き始めたイラストも今の今まで続いているし(ボクの中ではすごいことだ)、ましてやこんな風に書いて記事にさせてもらっているのだから、飽き性も捨てたモンじゃないと思えるワケである。

今回紹介するバンドは、そんな中学生の頃に出会い、そのカッコ良さでボクの脳ミソの細胞の1つに至るまで爆発させたバンドだ。正直、このバンドを紹介すべきか本当に悩んだ。今か? 本当に今書いていいのか? 果たして、このバンドを紹介するに値する力量がボクには備わっているのだろうか。もしも、この悩みを彼らに相談したらなんて言うのだろう。
頭の中で妄想してみた。真っ黒いサングラスをかけ、椅子にドカッと座っている。ふいに身を前にかがめて、ボクに言う。
「そんな悩みなんてフ××クだぜ。黙ってやりやがれ」
「……やります。書かせてください!」

さあ、いよいよOasis(オアシス)の登場である。海外だと「オエィシス」と発音するのが一般的だ。ブリットポップの代表格のみならず、ロックンロールという大きな歴史の川の中で燦然とまばゆい光を放つグループだ。
ほとんどの人がオアシスの曲を一曲は知っていると言っていいだろう。意識して聴いたことがなくとも、「あ、曲名知らないけど聞いたことあるメロディーだ」と感じるはずである。これがどれ程すごいことか。オアシスを聴いて、洋楽に目覚めた方も多いだろう。
有名な曲を挙げればキリがないのだが、あえて挙げるとすれば「Whatever」「Don’t Look Back In Anger」「Live Forever」あたりだろうか。もう多くは語るまい。語りきれない。
今回は、そんなオアシスの1995年のサードアルバム『(What’s the Story)Morning Glory』の曲を紹介させてほしい。特に好きなアルバムである。いかにもロックでクールな曲たち、キャッチーなメロディーに心を掴まれる。しかしどこか儚げで、そこでまたグッと引き込まれる。
ボク的に、このアルバムは「いつでもどこでも、心地良くボクを支えてくれる」アルバムである。家でも外でも、どこにいてもその空気や風景と曲が混ざり合い、とても心地良い空間にしてくれる。そんなアルバムだと思っている。

このアルバムの3曲目「ワンダーウォール」(Wonderwall)という曲を聴くとしよう。オアシスの代表曲の1つであり、イギリス以外の国々で最も売れた一曲だ。
まず「ワンダーウォールってなんや?」と不思議に思った。直訳すれば「奇跡の壁」とでも言うのか、それでも理解しがたい。この単語は、どうやら造語らしい。マイクロソフト社のワードで打っていてもWonderwallの下には赤い波線が出る。「間違っていませんか?」と知らせてくれているのだ。こんな単語、天下のマイクロソフト様と言えども、お目にかからなかったのだろう。しかし間違ってはいない。ワードには、これから幾度となくこの単語を打ち込み、徹底的にオアシス教育を施していきたい。さあ、歌詞の世界観を見ていこうではないか。原文を載せると長くなってしまうので割愛させていただく。

過去の行動に後悔している人。そして「ちゃんと考えりゃ良かったんだよ」と呟く「誰かさん」という構図の曲だ。
「誰かさん」は言う。

 

「お前にこんなこと言えるのは俺だけだぜ? 俺にしかお前を救えないんだよ」
「結局、俺はお前の『ワンダーウォール』なんだ」

 

この曲は、終始後悔している人に対し「誰かさん」が「俺しかいない」と言った意味合いの言葉を投げかける。果たしてこの「誰かさん」とは誰なのか。
後悔している人を「自分」と仮定しよう。後悔している人物を一番気にかけ、声をかけるのは誰か。
そう、「心の中の自分」である。
この曲は、心の中の自分をもう1つの人格として、その視点から改めて後悔している自分を俯瞰しているのだと思う。「ワンダーウォール」とは自分の行動を見つめ直し、時には諌める役割を持った、心の中の「最後の砦」といった意味があるのではないだろうか。
結局何をするにおいても、決定するのは「自分自身」である。正しい行動なのか、間違った行動なのか、その判断を下すのも自分自身だ。
「自分の価値観、考え方を大事にして『ワンダーウォール』から見守りやがれ」そう言われている気がする。自分の心を生かすも殺すも自分自身。なんていい曲であろうか。

今回この曲について書いたことも「飽き性上等」な考えも、ボクの心のワンダーウォールで「正しい」と捉えておきたい。

このアルバムは本当に名曲揃いで、書こうとすると年末までかかるだろう。何度聴いても飽きない。この曲に限らず是非通して聴いていただきたい! また紹介すると約束させていただく。
皆さんの「お耳のオアシス」になること間違いなし! 安直なキャッチフレーズを書き残し、今回は終わりにする。

[ライタープロフィール]

コバン・ミヤガワ
1995年宮崎県生まれ。大学卒業後、イラストレーターとして活動中。趣味は音楽、映画、写真。
Twitter : @koban_miyagawa