耳にコバン ちょっとためになるボク的ロックンロール通信

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耳にコバン ちょっとためになるボク的ロックンロール通信 第2回

 

第2回 スウェードとコインランドリーへ愛を込めて

コバン・ミヤガワ

 

皆さんは「コインランドリー」という場所を利用したことがあるだろうか。ここ最近なかなか晴れた日に恵まれず、洗濯物を外に干せなかったもので、生まれて初めてコインランドリーを利用してみたのであるが、あの場所はすごい。感動である。今の今までビショビショだったボクの服やパンツやタオルが、たった30分程でカラッカラのフワッフワになるのだから! これまで天気の悪い日には部屋干しという選択肢しか持たなかったボクにとって、あんな素敵な場所はないと思う。

それから、ボクのコインランドリー通いがここ数週間続いている。どうして今まで利用していなかったのか。タイムマシンを使って過去の自分に問いただしたい。
こんな素晴らしいコインランドリーのことを悪く言うのも大変失礼であるが、ボクが普段通っているコインランドリーが、とにかくボロい。「倉庫の1階、使ってないからコインランドリーにでもして金儲けしておこう」的なノリで作られており、洗濯機と乾燥機の他は本当に何もない。天井や窓は、クモの巣やら虫の死骸でワイワイ賑わっている。本当に誰かが管理しているのか時々不思議になってくるほどだ。

だがボクにとっては、そんな場所であっても、面倒な乾燥を一手に引き受け、文句も言わずに一生懸命フワッフワに乾かしてくれるのだから、愛しさすら感じるのである。むしろコインランドリーは、あれぐらいがちょうど良いのかもしれない。

このコインランドリー通いは、まだしばらくの間続きそうである。聞くところによれば、他のコインランドリーにはイスや雑誌なんかが設置してある、なんとも気の利いた場所もあるらしい。もはやコインランドリーの機能を備えたカフェではあるまいか。もう「コインランドリーカフェ」とでも改名した方が良いだろう。いつものコインランドリーで大満足しているのに、そんな行き届いたコインランドリーに行ってしまったら、ボクは一体どうなってしまうのだろうか。今度洗濯物を詰め込んだゴミ袋を担いで行ってみようと思う。「コインランドリー巡礼」が始まりそうな予感がする。

 

さて、天気の悪い日がダラダラと続いていたワケだが、どんよりした天気にはUKロックがよく似合う。どんよりした天気とノイジーなサウンドが、これまたベストマッチなのだ。

今回紹介する男たちは、ブラー同様、ブリットポップという流れを作り上げたバンドと言える。「スウェード(Suede)」である。
スウェードは、1989年に結成されたバンドであり、1992年「ザ・ドラウナーズ(The Drowners)」という曲でデビューを果たした。翌年リリースしたファーストアルバム『スウェード(Suede)』は、イギリスの音楽チャートで1位を獲得し、人気を博した。

というわけで、そのファーストアルバム『スウェード』を紹介していく。ボクの最初の印象は「刺激的……」であった。まずはサウンドを聴いた後の刺激。次に、歌詞の世界観を理解した後の刺激である。「こ、これ本当にファーストアルバムか……?」と感じずにはいられなかった。このアルバムは、多様な側面から見た「愛」や「性」という感覚を音楽で官能的に表現しているのだ。

 

 

キスをする2人の少年。美しい愛がジャケットから窺える。とかくこのアルバムは、様々な性の形を綴っているアルバムなのである。単純に「好き! 一緒にいよう!」といったラブソングではなく「本当にどこか知らないアパートの一室で起きていたことなのかもしれない」と思わせるリアリティや、そこに内在する感情をも想像させる世界観を作り上げたことこそ、スウェードが人気たるゆえんだと思う。

今回は、この連載では外すことができない、デビューシングル「ザ・ドラウナーズ」を見ていこう。なぜなら、この曲と、前回紹介した、ブラーが1994年にリリースした「パークライフ(Parklife)」という曲から、ブリットポップの流れは始まったとされているからだ。是非、聴いていただきたい。

「ザ・ドラウナーズ」については、歌詞の世界観よりもスウェードが放つサウンドについて書いていきたいと思う。先に言っておくと、この曲は「兄弟の同性愛」の歌だ。しかも弟が、この愛に苦しんだ末「兄を殺すしか解放される方法はない」とまで考えている。何とも刺激的な内容だ。

この兄弟の愛の物語を、彼らのサウンドが何とも美しく、耽美に描いている。まずはブレット・アンンダーソン(Brett Anderson)のボーカルだ。なんともセクシー。見た目もデビット・ボウイの様で、いかにも「セクシーなお兄さん」である。この手の男はモテる、絶対。このセクシーな歌声を支えているのがバーナード・バトラー(Bernard Butler)のギターだ。初めてこのギターサウンドを聴いた時は「なんじゃこりゃあぁ!」な面持ちであった。スピーカーから、何らかの悦楽物質が分泌されているかのようだった。気持ちのいいギターサウンドが、ブレッドの歌声をふわりと支えている。支えているというよりは「ギターの音が歌声の様にコーラスしている」といった方が適切であろうか。是非ギターに注意して聴いていただきたい。

曲名の「ザ・ドラウナーズ」は、つまり「溺れる者たち」ということである。この意味としては、複雑な感情に支配され、愛の深みへ溺れていく兄弟のことを指している。
しかしボクは、彼らの「サウンドに溺れて」しまったのである。ブレッドのボーカルの海にブクブクと沈んでしまい、そこにバーナードのギターサウンドが浮力の様に作用し、まるで海の真ん中でプカプカ漂っている様な感覚に陥る。心地のいい「溺れ」である。

同性愛や近親姦といったテーマは、曲としては描きにくいであろう。しかし、聴くものに敢えてこれらのテーマを投げかける。そこに、このアルバムの魅力や美しさがあると思うばかりである。

スウェードは、2003年に一度解散したものの、2010年より再び活動を再開している(ギタリストのバーナードは1994年に脱退)。今回は、ブリットポップ初期のスウェードについて紹介したが、最近のアルバムも非常にセクシーで美しいのでオススメさせていただく。

溺れましょう、スウェードの海に。

 

[ライタープロフィール]

コバン・ミヤガワ
1995年宮崎県生まれ。大学卒業後、イラストレーターとして活動中。趣味は音楽、映画、写真。
Twitter : @koban_miyagawa