耳にコバン ちょっとためになるボク的ロックンロール通信

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耳にコバン ちょっとためになるボク的ロックンロール通信 第1回

第1回 ブラーの落ちた恋

コバン・ミヤガワ

 

はじまして、コバン・ミヤガワと申します。

ボクはただの音楽好きだ。スマホの音楽アプリで、その時聴きたい音楽を聴きながらブラブラと外を歩き、レコード店で気に入ったCDやレコードやらを買って、家の安いコンポでダラダラと聴き漁る人間である。

ボクなんかが、このようなステキな機会をいただけるとは! 有難さと同時に、果たして務まるのだろうかという不安ウイルスが、全身をムズムズさせる。しかし、任せていただいたからには、全力でボクの愛して止まない音楽を皆さまに伝えさせて欲しい。

このコーナーでは堅苦しいコトは抜きにして、あくまでもボク個人がその音楽をどう考えているのか、ここが好きなんだぁ! という点を大事に、音楽を紹介していきたい。

さて、今回から数回は、90年代のイギリスにおけるロックシーンについてお話ししていこうと思う。
「なんで90年代?」「なんでイギリス?」と思われる方もいらっしゃると思うが、答えは「ボクが好きだから」である。ただただ好きなのだ。書かずにいられない。

90年代、イギリスに出現したポピュラー音楽の流れを「ブリットポップ」という言い方をする。「ブリットポップとは何ぞや?」という点については、たくさん書かなければいけないので、後々書いていくとする。ザックリ言えば「イギリスってイカすよな!」という流れのコトだ。非常にザックリではあるが。

そんな「イカす」ブリットポップで、まず紹介しなければならないバンドがブラー(Blur)だろう。ブリットポップの「ブ」はブラーの「ブ」と言っても過言ではないほどのバンドなのだ。

ブラーは、1990年に結成された四人組のバンドだ。そう、ブリットポップの源流のようなバンドとも言えるワケだ。
まずは、ブラー1991年のファーストアルバム『レジャー(Leisure)』の魅力を書いていく。厳密にはこのアルバムはブリットポップ期の作品ではないという見解が多数あるが、好きで仕方がないので書いていく。

 

 

このジャケット、花の付いた水泳帽を被った美女が、プールの前でこちらに向かって微笑んでいる。
果たして誰なのか。昔の水泳帽はやっぱり少しダサくはないか。その水泳帽の下はどうなっているのか。ロングヘアか、ショートヘアか。髪の色は……。

きっと、ブラーは彼女に恋をしたのだ。男の子ならわかるであろう、水着やスノーウェアや浴衣など、普段しない格好をしていると、女の子はより一層可愛く見えるヤツだ。ブラーもきっと、その現象に陥ったのだ。

『レジャー』の中で、まず紹介したい曲は「シーズ・ソー・ハイ(She’s So High)」だ。この曲は、ノイジーなサウンドや、ボーカルであるデーモン・アルバーンのダラっとした歌声も魅力だが、ボクは、この曲の歌詞が特に好きなのだ。歌詞を少し見ていこう。以下、引用である。

 

I see her face everyday
I see her face
It doesn’t help me

She’s so high
She’s so high
She’s so high

I want to crawl all over her

 

端的に訳すと「ボクは毎日、彼女を見ている。どうすることもできない。彼女はハイだ。彼女のいたるところをクロールしたい」となる。

ブラーは、彼女のコトを相当好きである。そうでもなければ、彼女の全身をクロールしたいなんて思わない。触れたいワケでも、キスしたいワケでもない。ブラーは、彼女の体をバシャバシャと泳ぎたいのだ。これは普段、我々が想像するどんな行為よりも親密な関係なのかもしれない。一方的だが、相当な愛である。
そして、一体何が「ハイ(high)」なのだろうか。ここからはボクの妄想である。

夏の間、少年は毎日プールに通う事を日課にしている。そのプールには、高い椅子に座った監視員の女性がいる。毎日顔を合わせるので、見かけると彼女は微笑んでくれるようになった。少年は次第に心惹かれるようになる。だが彼女から見れば、少年はただのプール好きの少年にすぎない。

少年から見たら、彼女はいつも高いところにいる。だから「ハイ」なのだ。そして、もう一つの意味が(恋愛的に見ても)手の届かない女性という「ハイ」なのだ。毎日泳ぎに来ている少年と、彼が想いを寄せる美女監視員。映画なら、ついつい応援したくなる恋物語だ。まあ、あくまで妄想だけど。

とはいえ、彼女への想いが叶いそうにない、手の届かない恋である事は間違いないだろう。そんな男の子の想いを綴った曲なのである。幼い頃、近所に住む、大人びたお兄さん、お姉さんに心惹かれた経験がある方もいるだろう。「わかる、わかるぞブラーよ」としみじみ思わせてくれる名曲なのだ。

このアルバムからもう一曲紹介するとすれば「バースデー(Birthday)」をオススメする。この曲は「あぁ、もったない」という一日を綴った歌だ。歌詞を見ていこう。

 

It’s my birthday
No one here day
Very strange day
I think of you day
Go outside day
Sit in park day
Watch the sky day
What a pathetic day

 

せっかくの誕生日なのに誰も来てくれない。なんとなく外に出てみたものの、公園でぼんやり空を眺めるだけ。そんな退屈な誕生日を送ってしまったのだ。

今日、プールのあの美女が隣にいてくれたら、こんな誕生日にはならなかっただろうに……。もう! なんで声をかけなかったんだ君は! ついついそう言いたくなる。
この二曲に繋がりを感じずにはいられない。

ブラーについては、ブリットポップを語る上でこの先また紹介することになるだろう。モワリとした曲ばかりでなく、爽快感あふれる、所謂、マッドチェスターな曲も紹介していきたい。

あぁ気になる、ブラーの恋の続き。

 

[ライタープロフィール]

コバン・ミヤガワ
1995年宮崎県生まれ。大学卒業後、イラストレーターとして活動中。趣味は音楽、映画、写真。
Twitter : @koban_miyagawa