一杯の紅茶と英文学

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一杯の紅茶と英文学 第2回

2019 年 10 月 15 日 火曜日

第2回 「ミルクティー、タピオカ抜きで!」

南野モリコ

「タピ活」は「ティー活」。

タピオカがブームである。昨年2019年から筆者の周りの20代の女子たちが「今日は絶対にタピる」、「タピオカなしではいられない」と話しているのを聞き、ブームの予感はしていたのだが、「タピ活」というワードまで浸透するとは思わなかった。こっくりと甘いアイスミルクティーの底にもっちりしたタピオカがごろごろと入り、太めのストローで吸い上げるのに初めは躊躇するものの、その食感は確かに美味である。第1次タピオカ・ブームの時に体験したタピオカより数倍、おいしい。Мサイズのカップ1つ600円以上。一瞬「高っ!」とは思うのだが、これ一杯で喉も潤いお腹も満たされるなら手頃な値段である。 (続きを読む…)

一杯の紅茶と英文学 第1回

2019 年 9 月 15 日 日曜日

「お茶の時間」は19世紀のインスタ映え

南野モリコ

承認欲求を満たすアフタヌーンティー

フランスの画家、ジェームス・ティソに『温室でのティータイム』(1875〜78年頃)という作品がある。ヴィクトリア朝中流階級の家庭のドローイングルーム。今でいうリビングのような広間でアフタヌーンティーを楽しむ人々が描かれている油彩画だ。陽当たりのいい、明るい広間が大きなガラス窓で囲まれていて、中庭には植物園のように熱帯の植物が葉を茂らせている。絵画の登場人物は、ゲストである二組のカップルと屋敷の住人である姉妹だ。当時の最先端のファッションに身を包んでいるが、客人をもてなす姉妹は、柔らかいミントグリーンのおそろいのドレス。インスタグラムでいう「#双子コーデ」である(1)。

自宅に親しい友人を招きお茶をもてなす「午後のお茶(アフタヌーンティー)」は、1840年頃、ロンドン郊外に住む七代目ベッドフォード公爵夫人アンナ・マリアによって始まり、ヴィクトリア女王がその習慣を取り入れたことからイギリス中で流行した。当時のイギリスは、夕食の時間が遅かったので、親しい友人を招いて食事の時間までの空腹を満たしたのだ。

しかし、招く女性たちが「素敵な暮らしをしていると思われたい」という下心を持つのも当然のことだろう。お茶の時間は友達から「いいね!」をもらう場でもあったのだ。 (続きを読む…)