オーラルヒストリー・三輪祐児 父と原発の記憶 第3回

2019 年 9 月 15 日 日曜日

プロローグ③:天皇と科学技術の信奉者

 

三輪祐児は2014年、弁護士の海渡雄一を訪ねた。海渡は「反原発へのいやがらせの歴史展」の主催者だった。

東京都新宿区にある海渡の法律事務所に足を運んだ。9月15日だった。三輪は、父が電通時代に記していた業務日誌や手帳など5点を海渡に渡した。

海渡は、反原発運動に関わる市民や弁護士らへ送られてきた嫌がらせの手紙のデザインや構成に、「広告関係の人間が絡んでいる」とにらんでいた。「広告のプロが腕をふるっているのではないか、簡単に作れるものではない、かなり手の込んだものだ」

海渡は業務日誌を一枚一枚めくっていった。三輪の父が、原発推進グループの一部となって働いていた姿を知る。そして、海渡は推理していた「犯人像」と三輪の父が重なった。

目の前の三輪は苦しそうだった。 (続きを読む…)

オーラルヒストリー・三輪祐児 父と原発の記憶 第2回

2019 年 8 月 15 日 木曜日

第2回 プロローグ② 「新聞記者と弁護士が大嫌い」

木村英昭

三輪祐児は、電通で勤務していた父が反原発運動に関わる市民や弁護士への組織的な「嫌がらせ」に関与していたのではないか、という確信めいたものを感じた。

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小学生の頃は電通の社宅で暮らしていた。現在の半蔵門病院(東京都千代田区麹町1丁目)のあるあたりだ。4階建ての3階。6畳2間の風呂なしの部屋だった。父と母、妹の家族4人で住んでいた。
家庭の食卓で交わした会話を今もはっきりと覚えている。

「5000円で車椅子に乗っている人間をデモ隊の前で転ばせて、それを隠しカメラで写し、『暴行するデモ隊』っていう記事を週刊誌に載せた」
「電通の社員に5000円を渡して、『赤提灯で美濃部の悪口を言え』と頼んでた。『美濃部は女囲っている』『横領している』と」 (続きを読む…)

オーラルヒストリー・三輪祐児 父と原発の記憶 第1回

2019 年 7 月 15 日 月曜日

第1回 プロローグ① 引き出しの手紙

木村英昭

6年前のことから書き始める。

2013年8月10日——。東京都心でこの日最高の37.0度を記録した。午後1時過ぎ、東京・西新宿にある新宿中央公園に到着した三輪祐児は汗だくだった。頭に巻いたバンダナはぐっしょりだった。いつものロードバイクの自転車で都心を駆け、自宅から1時間ほど掛けて着いた。

新宿区立区民ギャラリーに入った。リュックからハンディービデオカメラを取り出した。三輪は市民メディアUPLANを主宰している。この日から始まった展示イベント「反原発へのいやがらせの歴史展」に合わせたトークイベントの撮影を依頼されていた。2011年の東日本大震災を契機に、三輪は反原発や平和を求める市民活動を記録する活動に没頭していった。その活動の拠点にしたのがUPLANだ。 (続きを読む…)