日々是好日

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月別一覧

日々是好日 第5回

2019 年 10 月 16 日 水曜日

♯5 ひとマス戻るモーター編

林タムタム

 

彩流社さんに今月もなんとか原稿を送った。ふう…がんばった…よしよし…。

しかしそれはいくつか前の原稿の下書きであった。

当然原稿は原稿の体をなしていない。やんわりと質問のメールをいただいた担当者様、本当に本当に申し訳ありません。ついに壊れたと思われたでしょうか。本当にごめんなさい。タムは今後もこの連載を頑張りたいと思っていますので何卒今後ともよろしくお願いいたします。

タムはあまり掃除ができないたちである。タムの母が、非常な綺麗好きであったため、タムの生家は非常に綺麗に片付けられていた。そのためタムは、綺麗な机の状態、綺麗な家の状態というのがなんたるかについては理解している。

今いる自分の家についても、友人や郵便屋さんが見るかもしれないと考え、彼らの来襲が予期される場合には、部屋を片付けておこうという知恵は付いている。しかし内心は、いざ掃除をするにあたっても、片付けられた家なるものをこれまで見てきた通り再現しているだけで、なぜ部屋を片付けなくてはならないかということを真の意味では理解していない。部屋が汚くても特に私自身は不快を感じていないのである。むしろ多少汚いぐらいが味があるくらいに思っている。 (続きを読む…)

日々是好日 第4回

2019 年 9 月 15 日 日曜日

#4 閑話休題東北編

林タムタム

 

大曲にいた。

広い河川敷に広く広く用意された桟敷の人区画に座って日本酒を飲んでいた。8月の末でも秋田の夜はどこかさわやかだ。さっき通り抜けてきた横手やきそばや焼き鳥の屋台の賑わいの先に、この河川敷があり、桟敷には驚くほど多くの人が集まっているはずなのに、一人一人の可処分的スペースが広いのか、座った皆の鼻先まで降りてきている高い高い夜の空が広いせいなのか、あたりは静かでおとなしかった。日本酒を3分の1ほど入れた紙コップが、水気を含んで心なし冷たくなり、紙の表面の細かな凹凸がこれまでにないほどはっきりと指から読み取れる。周囲の人たちが各々話し笑い合っているのが見て取れるのに、音は夜空に吸い込まれて個別の語の区別のない、控えめなさざめきとしてしか耳には届かない。日中の色付けが想起されない、夜の河川敷で、各人は身を寄せ合うわけでもなく、何かに打ち込むわけでもなく、ただこれから起こることを期待して集まり広がっていた。 (続きを読む…)

日々是好日 第3回

2019 年 8 月 15 日 木曜日

♯3 二足歩行スミレの押し花編

林タムタム

タムは関東に来てから、頻繁に芝居を観に行くようになった。花園神社で大鶴義丹が文字通り空中に昇って行ったのはあっけにとられた。大きい兄ちゃんよう。

とはいえタムの一等好きな芝居は、関西発祥の宝塚歌劇である。宝塚を観ると異様なまでに元気が出る。私に今後、辛いこと悲しいことが起こっても、宝塚がある限り、それらを乗り越えてゆけるだろうという完全に根拠のない(合理的でもない)自信を、宝塚によって給油ノズルガチャ押しチャージするのである。この国で育った割と多くの人は、幼少時、愛と勇気だけが友達なアンパンマンを観ていたと思う(ある人が、人間をアンパンマンから隔離して育てるという無謀な人体実験を、しかも我が子を被験者として行った。しかし、対象に少しでも接触すると子はその虜になってしまったそうである。おそるべきあんぱん)。しかし人は歳をとり大人になり、他人の顔色を見、本音と建て前を使い分け、いつしか愛と勇気だけではやっていけないと変に諦めをつけるようになってしまう。だが、一部の人は幸運にして宝塚歌劇に巡り合う。歌劇は愛と勇気を高らかに歌い上げる。めちゃくちゃキラキラしていて説得力という名の圧がすごい。舞台上の皆がすごく眩しいんだよ。指先も姿勢も横顔もすごく綺麗なんだよ。2次元のあんぱんとは説得力が段チだよ。なんてったって生の舞台だからなぁ。演者自身が信じていなきゃとてもやれないほどの圧である。 (続きを読む…)

日々是好日 第2回

2019 年 7 月 15 日 月曜日

#2 思い出ハイハイ編

林タムタム

 

私の卒業した大学の話をしよう。

(西の)都に出町柳という駅がある。駅を出たとこの柳月堂でパンを買い、東へなだらかに道を進めば、百万遍の交差点に出る。反対側に見える石垣が、京都大学だ。

ここは有名な研究者を結構多く輩出している。白浜に水族館を持っている。今ホームページを見てみたらチンパンジーの子がおやつを食べることを解明していた。かわいいね。

この大学のもう一つかわいいところは「自由の学風」を掲げているところである。この「自由の学風」こそが、この大学を唯一にして孤高、ユニヰクにしてアバンギヤルドたらしめているのだ。 (続きを読む…)

日々是好日 第1回

2019 年 6 月 14 日 金曜日

第1回 イントロ二本足編

林タムタム

 

人のお金で東京に行った。参議院会館の地下の食堂、めちゃくちゃ種類があって美味しかった。その時出会った某編集者さんのところに無理やり押しかけ、西荻窪を北へ南へ、ご飯をさんざご馳走になり、その人が行くという歌舞伎町の飲み会にまで参加して、このものを書く話をもらったのである。飲み会は出版に関わる人たちの飲み会であった。世の中に文字や思想や文化を生み出そうとする人たちの飲み会。なんて素敵な響きでしょう、飲み会とは言わず宴というべきね。私は出版関係の人間ではない。何かを世に生み出そうとしたことがあるとすれば夏休みの作文と、あとは〇〇〇くらいのものである。正直その場に出版関係ない輩は私だけだった。

話をくださった河野さんと、高尚な話はしていない。いや、話自体そんなにしていない。ピーナッツを何かしらと炒めたあれ美味しいよね。 (続きを読む…)