歩く民主主義

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歩く民主主義 第4回

古い人たちにはうんざりだ

村上稔

 

嫌韓とか反日とか、ホントつまらない。なぜつまらないかと言う理由をいくつか挙げてみたいと思う。

まず一つ。うちの会社は移動スーパーの運営の他に、徳島県鳴門市の大毛島に「うずしおゲストハウス」という旅宿を経営している。大毛島は去年の紅白歌合戦で米津玄師が中継をして話題になった大塚国際美術館や鳴門の渦潮で有名な観光地なのであるが、うちの宿には連日、世界中から旅人がやってくる。ヨーロッパ、アジア、アメリカ、オセアニア……いろんな国の人たちが集まって、共有スペースは夜な夜なインターナショナルに盛り上がっているのだ。

先日も、夏休みを利用して青春18切符で旅をしている17歳の悩める日本男子高校生が、韓国人のカッコいいお兄さんに英語の単語を並べて人生相談をしていた。

高校生曰く「学校や親から進路の決断を迫られているが、やりたいことがわからない」とのこと。そこで韓国兄さん「ハウオールドアーユー?」。高校生「セブンティーン」。すると韓国兄さん、ニコッと笑って「セブンティーン、ノープラン、オーケー!」と一言。

で、それまでの高校生の深刻な顔がキョトンとしたと思ったら笑顔になった。「ノープラン、オッケー?」「オーケーオーケー! セブンティーン、ノープランオーケー!」二人して声を上げて笑っている。

宿業冥利に尽きるとっても幸せな瞬間だ。私はその高校生の解放されたような弾けた笑顔を見て、彼の旅の成功を確信した。

毎晩こんな感じで、世界中の人たちが仲良くなって新しい友達を作っている。こうやって民間人の我々が世界平和の礎をコツコツと積み上げているのに、ほんと古い政治家たちには腹が立つ。人は人と仲良くしたら良いことだらけなのに、過去のバカな権力者がやった戦争の後腐れで、現在を生きる我々が今だに喧嘩をしているなんてつまらなさすぎるだろう。

 

政治の問題のひとつは選挙にある。

先日、九州大学の岡崎晴輝先生が『選挙性を疑う』(法政大学出版局)という翻訳のご著書を送ってくださったのだが、そのタイトルに我が意を得たりと思った(まだ読んでませんが……汗)。

毎度マスコミも煽るように、選挙には「争点」が求められる。まあそりゃそうだ。争点がなかったら今のままで良いのだから誰も新しく立候補なんてしない。

ただ、争点と言うぐらいだから争わなければいけない。僕もかつては自分自身の選挙を4回、人の選挙の手伝いは数え切れないぐらいしたから、選挙の雰囲気についてはよくよく知っている。そこで支配する空気は、いかに我が陣営の候補者が優れているかというアピールよりも、いかに相手がダメなやつでひどいやつかを煽りに煽るというものだ。

だいたい人は、自分がハッピーな状態、平穏な状態で、「動かなきゃ」「変えなきゃ」なんて思わない。そんなわけで、選挙で陣営が劣勢な時に盛り上げる一番の方法は「敵を作ること」だ。相手は悪いほど良い。

選挙の演説で「安倍さんは良い人だけど私の方がベターだよ、なぜなら…」なんてやっても、減塩料理みたいなものでガツンとはこない。中には意識の高い人が素材の味を分かってくれて一票くれるかもしれないけれどそれはマイナーだ。選挙の相手は悪の権化でなければならない。

ましてやボクシングなんかの試合を見ても韓国人は「熱くなることが大好きな人たち」である(おかげで韓国料理は美味しい)。政治家が人気を得るために「熱いもの」が必須なのは想像に難くない。そんな中で、いつものお馴染みのメニューが「反日」だ。僕はこのところの文大統領を見ていると、反日感情を無駄に煽って自分の存在感を保とうとしているようにしか見えない。

文大統領が誕生した時には、ずいぶんスピーディに北朝鮮との和解を図ったりして、僕はこの人はこれまでの文脈を壊す=歴史を動かす新しい人かと期待していた。ところがここにきて、相変わらずの古い人っぷりでがっかりだ。

また、これに乗っかって日本の浅ましい古い人たちや古いメディアが、過激なことを言って炎上商法で稼ごうとしているから輪をかけてうんざりする。

 

古い人たちが世界の進化(深化)を邪魔している。その典型が政治家だ。ただ古い人は我々自身の中にもいる。年齢じゃない。自分のことばかり考えて、世界をエゴのゴミ箱としか見ていない人が古い人なのだ。しかし、僕は絶望することはないと思っている。なぜなら、うちの宿に泊まってくれた先の高校生のような子どもたちが、時代を作る「新しい人」として続々と後に控えているのだ。我々にできるのは、せめて彼らの邪魔をしないようにすること。そんな気がする。

 

[ライタープロフィール]

村上稔

(株)Tサポート代表取締役 沖縄国際大学特別研究員 元・徳島市議会議員

著書『希望を捨てない市民政治』『買い物難民を救え!移動スーパーとくし丸の挑戦』『歩く民主主義』(緑風出版)『ひとびとの精神史第8・9巻』(共著・岩波書店)ほか。