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歩く民主主義 第3回

第3回 N国党のやり方はアリか?

村上稔

今回は先日の参議院選挙について語りたいと思う。エラそうに政治評論かよ、と言うなかれ。実は私は政治については素人ではないのである。

というのは、私はかつて市議会議員を3期務めたのだが、吉野川可動堰(ダム)計画をめぐる住民投票運動からはじまり、それに続く市長選挙、知事選挙と中心的にかかわり、知事を出した後は「側近」としてわずか11か月間で不信任を食らうまで、夜な夜な知事公舎に通って県庁役人との闘いをサポートしてきたという経験を持っている。民主党政権の官房長官だった故・仙谷由人さんとも親しく、彼の言い出した「コンクリートから人へ」は私のコピーのパクリなのである(と私は思っている)。

そんな訳で私は、政治をちゃんと勉強してはいないが、一見の観客では見られない舞台裏の仕組みや力学を垣間見、政治改革の難しさを身をもって経験しているのだからその辺の銭湯談義のおっちゃんと一緒にしてもらっては困るのである。

 

まずは山本太郎率いる「れいわ新選組」の躍進。私はかつて、中村敦夫さんを代表とする「緑の会議」(日本版・緑の党)の参議院選挙に関わった経験があるので分かるのだが、非政党が国政選挙を闘って議席を取るのは奇跡に近い。なぜなら、いくら活動してもマスコミに完全に無視されるからだ。それは、この人たちには票を入れなくていいですよ、という暗黙のメッセージである。彼らはそこを突破したのだからすごい。今回はユーチューブをはじめとするSNSが、はじめてマスコミに対抗しうるだけの影響力を発揮した選挙でもあったのだろうと思う。

地味な安倍政権がこんなにも一強化・長期化しているのは、他でもない民主党政権崩壊後の絶望的な政治不信が背景にある。要するに民主党がダメだったので、国民は政治改革を信じることができなくなったのだ。なので次の潮流は民主党DNA以外のところからしか出ようがない。そこに山本太郎が登場した。彼は明らかに既成野党からも距離を置いていてフリーな立場に見える。そして粘り強いパワーとさすがのパフォーマンス力がある。候補者も全員、存在感に説得力があって、よくぞこれだけ幅のある人たちをまとめ上げたものだと感心する。そして自らは一歩引いて重度障害者の木村さんと舩後さんを送り込んだのだが、この意味は限りなく大きい。これだけでも革命といえるだろう。

 

もう一つ面白かったのは「NHKから国民を守る党」である。私も例にもれずその政見放送には嫌悪感を覚えたのであるが、同時に党首の立花孝志から目が離せなくなった。それというのも、彼のNHKの集金システムへの批判に共感を覚えたからである。私個人は、NHKは良識的なドキュメンタリーや教育番組など、他の民放では期待できない番組作りで、社会にとって大切な存在だと思っているのだが、その集金の現場はたしかに強引で、何度か不快な経験をしたことがあったからだ。

このN国党の政策は「NHKのスクランブル放送化」というただ1点で、たしかに品行方正ではないのだが、そこが面白い。

ある意味、山本太郎と対照的である。山本太郎は情に訴えて共感と期待を煽ったが、どこか浪花節である。浪花節なので涙をそそるし応援したくなるが、実際の変革への期待は、私のようなスレた人間はちょっと冷めてみてしまう。

なぜなら、この国の政治改革というのは、実質的に「官僚軍団との闘い」だからだ。何万人もの学歴エリートが堅牢に組み立てた理屈とこれまでの既得権益の歴史に対して闘いを挑むのだから、情に訴えるだけでは歯が立たない。

その点、ワンイシューだけならまだしも闘える。我々の吉野川可動堰問題がそうだった。争点を可動堰建設の是非という一本に絞って闘ったから、相手が建設省や自民党であっても、ガチッと固めてゲリラ戦で勝利することができたのである。

昔の学生・労働運動では日米安保などを争点に「一点突破全面展開」をねらったらしいが、なんと素朴な発想かと思う。象に一撃を与えるだけで倒れると思っているアリみたいなものだ。

N国党はスクランブル放送が実現したら党は解散すると言って潔いが、ワンイシューだけならその闘いは見ものである。

現に我々も住民投票以来20年間、自民党政権も官僚体制も何も変わっていないが、彼らはいまだに吉野川に可動堰を造ろうとは言い出さない。象もバカではない。そこに行けばアリにチクっとやられる(落選したりする)ことを知っているから近づかないのだ。これもまた小さいけれど確かな一つの改革なのだと思う。

最後に言い訳のようだが、私は勉強不足でNHKがスクランブル放送にすべきかどうかはわからないし、立花氏の過激なやり方に反発を覚えることも多い。ただ言いたいことは、何かを変えたいと思う人が、この民主主義制度の中で、ワンイシューで乗り込んでいくという戦略は「アリ」だと思うのである。れいわ新選組の木村さん、舩後さんも、ここはアリ戦略で良いので、ぜひとも何か確かな一個を勝ち取ってほしいと思う。

 

[ライタープロフィール]
村上稔
(株)Tサポート代表取締役 沖縄国際大学特別研究員 元・徳島市議会議員
著書『希望を捨てない市民政治』『買い物難民を救え! 移動スーパーとくし丸の挑戦』『歩く民主主義』(緑風出版)『ひとびとの精神史第8・9巻』(共著・岩波書店)ほか。