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江戸の雀

ちゅぴん、ちゅぴん、と雀が威勢よく鳴き始めてうれしいなと思っていたのもつかの間、あっという間にもう暑いぐらいの日々。毎年のようにこういった季節の変わり目にはクローゼットを前に「いったい去年の今ごろは何を着ていたのだっけ」という困惑につきまとわれることになります。

衣裳持ちならではの悩みでないのが悲しいところで、たいてい「着られるものがない」と慌てているのが実情です。こうなる理由は様々なれど(洗濯やアイロンがまだといった日常的なことのほか、似合わなくなったとか飽きが来たとか)、あるシーズンを終えてみれば、これまでともに過ごした時間に感謝しつつ、いくら好きでも「もうこれ以上着るのはみっともないかな」と思えるほどくたってしまう洋服が出てくるのがそのひとつ。だから早めに買い足しておかないとオロオロすることになるのです。

そう、服だって消耗品。だからと割り切って、いわゆるファストファッションを買うことはこれまた様々な理由により極力「ボイコット」していますが(けれど、ファストファッション系のもののほうが質がいいときありますよね……経済って不思議)、「一生ものとして大事に着るから!」と一枚の服に身の丈に合わない大枚(私にとっての大枚なのでたかが知れているとはいえ、生活が非常に圧迫される……)をはたき、結果、「所詮、服や靴で一生ものなんてあり得ないのよ」と独りごちることがままあります。一生に数回しか着ない(履かない)なら一生ものになり得るってことだよなあ、と。そして、買った服を寝かせておく余裕は私にはない……。

けれど、江戸時代の庶民の多くは着物を一、二枚持っているだけで、それを縫い直したり染め直したり繕ったりして長いこと着続けたのだとか。ほぼ着たきり雀でありながら、一生ものを持っていたというわけです。現代のように物がたくさんある生活はやはり捨てがたい(というか、捨てたくない)ですが、同時に、どこかそういうシンプルな生活がうらやましくもあり、憧れでもあり。

そんな江戸時代を舞台にした小説『北斎と応為』を刊行予定です。作者はカナダ人女性、主人公は実在の女絵師・葛飾お栄(応為)。ご期待ください。なお、雀は出てきません。

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(マルタケ牧場)