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映画『ホース・ソルジャー』を観て

過日、GWに公開予定の映画『ホース・ソルジャー』の試写会に行ってきました。

9.11直後に志願したアメリカ軍人12名が、アフガニスタンのテロ集団の拠点を制圧するまでの過酷な闘いが描かれたもの。
祖国を愛する12人の志願兵は、険しい山道を移動するのに馬を使うしかなく、
馬に乗ってテロ集団の拠点の位置の正確な座標を確認して米軍基地に空爆を要請するもの。
そのために、反タリバン勢力の協力が必至で、その文化の違いも粘り強く交渉していく、主人公に焦点が当てられる。

実はこの作戦は秘密裏に行われたため、ずっと封印されてきた史実。
テロ集団の拠点、マザーリシャリーフが制圧されたことが、タリバンにとってはとてつもない敗北だったと声明を出したらしいし、
一方、アメリカ側ではこの12名の偉業を讃えて、ワールド・トレードセンタービルの跡地、いわゆる「グラウンド・ゼロ」に
彼等陸軍特殊部隊の騎馬像が立っています。

隊を率いるネルソン大尉を演じるクリス・ヘムズワースの演技はとても迫真に迫るものだし、
過酷ななかで部隊をまとめ、時には自ら危険に身を投じたり、隊員の考えを尊重したりするリーダーシップを上手く演じていたし、
脇を固めるマイケル・シャノンの演技もとてもよかった。
空爆のシーンなどの迫力もあり、カメラアングルなどとても凝られた映画だったと思います。何より、戦闘シーンは迫力があった。

しかし……。

この映画は、アメリカを愛する、そしてアメリカ人の愛国心を賞賛するものであり、アメリカ人がみたら
テロは憎い、だから報復すべきだという構図そのものである。
憎いテロ集団は殲滅させるべき。それはあたかもアメリカ人に課せられた天命であるかのような構図も見え隠れして、考えさせれた。
ところどころ、いかにタリバンが“野蛮”なのかを浮き彫りにするため、女性は8歳をすぎたら教育は不要であり、
隠れて本を読んでいた女性を小さな女の子たちの前で処刑するシーンなどが挿入される。
こうした”野蛮”な行動をとるアルカイダは殲滅してもいいのだといっているかのごとくである。
むろん、テロは許されるべきものでは決してないと思います。
しかし、なぜ、そもそもテロは起きたのか。そして、テロに対しての報復が始まり、いわゆる憎しみの連鎖が繰り返される。

何も考えず、12人の米軍兵士の視点にだけ立って、手に汗握る映画として観ればとてもすっきりするし、それはそれでひとつの映画の見方である。

こうした実話を賞賛する映画が作られる現状のアメリカを否定はしないけれど、まあ、いろいろ考えさせられた映画である。

百聞は一見にしかず、5月4日よりロードショーです。ぜひ、ご覧になり、アメリカという国は何なのか、映画を通して実感するのもよいかもしれません。

ちなみに、憎しみの連鎖を断ち切るために、アメリカの社会学者のC.W.ミルズは「動機の語彙論」を提唱しています。
「動機の語彙論」とは、「後付け」的な「おりあい」「落としどころ」、納得の付与等として動機を捉える着想です。
この動機論は、「心のなか」に何らかの真の動機があって、それに突き動かされて人間は行動するというような考え方ではなく、動機というものは状況ごとに、「心のなか」ではなく「心の外」であらかじめ決まっていて、適切な語彙を選択してあてはめることでその場をおさめるものである。人間は自省的なシミュレーションを行って社会を構成するという考えです。
つまりは、人の行動には後付けでよいので、どの動機には何らかの折り合いや落としどころが必要だということです。
憎しみの連鎖をどのように断ち切るか、その想像力を獲得するため、ミルズ社会学を再読してみるのもよいかも知れません。
手前味噌ですが、それらがまとまった本が弊社より出ております。
『C.W.ミルズとアメリカ公共社会  動機の語彙論と平和思想』(伊奈正人/著)です。

映画を観た後でもよいですし、公開までの間に本書を手に取り、それから映画を観てもよいですし、
とにかく、さまざまな想像力はもっていたいものです。
それこそが人文学が、現在こそ必要な証左なのですから
(小鳥遊)
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