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タイムスリップできる建物

JR東京駅八重洲南口から徒歩数分というロケーションに、タイムスリップしたかのような建物がある。明治時代(1894年)に鹿鳴館で有名なジョサイア・コンドルによって建てられ、その後1968年に解体されてしまった赤煉瓦のオフィスビルが復元されたのだ。三菱一号館である。
竣工記念として「一丁倫敦<いっちょうロンドン>と丸の内スタイル展」が開催されている(1月11日まで。 http://mitsubishi-ichigokan.jp/)。たった(と言っていいだろうか)110年あまりで東京駅周辺がこんなにも変わってしまったのかと驚かされた。
この展覧会は非常におもしろい。
建築の展覧会というのはそんなに見たことがないけれど、音楽や画とちがって、実物を美術館などに展示することができない。「昔あった」建物や「案はあったが結局は建てられなかった」建物はなおのこと。模型の展示では当然まったく実物とは違ってしまうし、設計図などをしめされた日には素人はいったいどう読み何をイメージしたらいいのかまったくわからない。
その意味で、この「一丁倫敦~」は、復元された(一度オフィスとして復元されたあとに美術館として利用できるように転用するのだが)「実物」(したがってカッコ付き)をまず見ることができるし、そのプロセスで一部の建築部材の実物(当初のものと現在のものを比較しつつ)が展示されていたり映像で見せているし、復元の際にわからなくなった部分はどういう資料を参考にしたがゆえにこの形になったかということも公開している。

新刊『建築はいかに社会と回路をつなぐのか』(五十嵐太郎著)の中で、このプロジェクトについて触れられている。

五十嵐さんの本を作らせていただくのは3年越しの夢だった。建築という分野にまったく明るくなかった私が、今回本のオビにもピックアップした言葉は、しかし不思議とジャンルを超えて私自身のテーマの核心もつく言葉だった。
「現場には歴史を組み立てるための理論は埋まってはいない。見ることと考えることの相互作用によってのみ、建築史は作り上げることができるのである」
「そのためには歩くしかない。「世界」から括弧を外すための、零点からの新たな旅立ちである」
歩く人、歩いて考える人の言葉はもっとも信頼できるなあと改めて思う。

1月18日は、出版を記念して建築系ラジオでこの本の公開討論会をします。ぜひご参加・お聴き下さい。ということで、今年もよろしくお願いします。(出口)