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コバルト文庫といえば……(恥)

現在、発売してひと月で重版するなど話題の『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』が彩流社より絶賛発売中です。同僚が企画から立ち上げて、良書に仕上げていって、さらにこうして売れ行きも好調ですので、嬉しい限りです。

Twitterなどでは、みなこの本に対する感想を述べながら、自分の読書体験を嬉々として書き綴られることも多いようです。

それはそうだと思いますよ。え、なぜって、僕も自分の思い出が喚起されたくちですからね……。
編集部でこの本が出来上がるのを横目で眺めながら、僕自身も、コバルト文庫といえば……、いろいろ思うところがありましてですね、ちょっとだけ認めてみたいと思います。

僕のコバルト文庫との出会いのきっかけは、中学時代にどっぷりはまった赤川次郎だと記憶しています。赤川次郎の作品は片っ端から読んでいて、その矛先が、ついにコバルト文庫から刊行していた『吸血鬼はお年ごろ』に向いたわけです。
正直、柔道部で硬派を気取り、「中学時代は女なんて見向きもせんわ」とうそぶいていた僕は、赤川次郎以外によく読んでいたのは友達の影響で眉村卓や星新一などでしたが、平井和正や北方謙三なども好んでいました。

そんなですから、あの独特なカラフルな文庫、そしてマンガちっくな装画に手を出すのは、ちょっとためらいもありました。でも、好きな赤川次郎の作品ならばどんなレーベルだって! という思いでレジにコバルト文庫を持って行った記憶があります。そう、あれは、栃木県今市市のサンバード長崎屋の4階にあった本屋でした。
まあ、それはさておき、僕の部屋にあったコバルト文庫を目にした2歳上のすかした姉は「ふーん、そういうのも読むんだ」と、とある日なかば白い目をして呟いたのですが、僕は小学校の頃から姉の部屋にあった「なかよし」や「りんぼ」のマンガ雑誌のほか、「明星」や「平凡」などのアイドル情報誌も読んでいたので別に姉の白い目は気になりませんでしたよ〜。(まあ、「Lemon」とか「Seventeen」などはさすがに読みませんでしたが……)

 

仲のよかった姉弟でしたので、お互いの部屋は勝手に自由に出入りしておりました。で、姉の部屋には、なーんだ、氷室冴子や新井素子、久美沙織などいろいろあるじゃないか……。ということで、通過儀礼(なんの?)としてざっと読んだ記憶があります。でもなぜか、姉にはばれないように……。
でいつのまにか高校に入った僕は、さらに柔道部で硬派を気取り、コバルト文庫などとは縁遠くなりましたが、大学浪人時代に、予備校の寮生活になった僕は、息抜きと称していろんな文庫本を読み、そのなかにコバルト文庫も紛れておりました。そのころ読んでいたのはなぜか折原みとなどでしたが、作家つながりでコバルト文庫に手を伸ばしたのが掘田あけみでした。文藝賞をとった『アイコ十六歳』から『サクラ日記』『煙が目にしみる』など河出文庫(だったと記憶しているが)で読んでいて、『転がる石になれ』とか『終わらない歌を歌おう』などコバルト文庫に手を出しました。お金もなかったので図書館から借りて読んだりもしました。なぜか堀田あけみ作品のコバルト文庫は音楽をテーマにしたものが多いのですが、なかでも数時間で一気に読んでしまい、読後感がほんとうに切なくなったのが『Shout! 愛するために生まれた魂』でした。一途なヒロインがかわいそうでかわいそうで……。ちょっとした、いい意味でトラウマ作品となってしまいました。

そんな、つかず離れずのコバルト文庫との付き合いも、大学に入ると本読みの好きな人間にありがちな「創作熱」というものに罹ってしまい、一度だけ、コバルト・ノベル大賞に応募したことがあるのです(最大級に恥ずかしい……)。

タイトルは今でも覚えておりますが、
『相合傘で歩きたくって殺人事件』といいます……。

生徒会長に片思いしている生徒会役員の地味な眼鏡をかけた書記の主人公が、ある日、傘もささないで、高校から駅まで土砂降りのなか、昇降口から走って行く彼の後ろ姿を見たその日から、生徒会長と相合傘をしたくて、毎朝アメダスを気にして、てるてる坊主を逆さに吊るして学校に行って、お気に入りの真っ赤な折り畳み傘をどんなカンカン照りの日にも鞄に忍ばせているという赤面ものの設定でした。
で、彼女の親友が何者かに殺されて、その生徒会長に嫌疑がかかり、その親友の残したノートを頼りに真犯人を見付けていくという赤面必至のプロットだったような……。
最後はお約束ではありますが、カンカン照りなのに、ヒロインの気持ちを受け入れた生徒会長が、「空はこんなに天気がいいけれど、僕と君の心のなかにはなぜ雨が降っていると思うんだ。だから、傘をささないとね」とかなんとか言って、鞄から頭だけはみだした真っ赤な折りたたみの傘を指差して、ウィンクする(というはずだったと思う……)。
真っ赤になったヒロインがその傘を出して、カンカン照りのなか、二人で相合傘をさして帰っていく…という……。

【追記】
一日経って、このブログを見返したら、結末部分が、自分でボツにしたバージョンだったと思い出した。(スミマセン!)

応募したバージョンは、事件がすべて解決して、生徒会長と二人で帰るとき、朝のアメダス予報も晴れで、空はカンカン照り。ここまで一緒。
で、昇降口を降りたとたんに、突然雨が降り出すというオチにしていたことを思い出しました。
ヒロインの書記の娘が、心のなかで、「うわ、奇跡が起きた! 突然雨が降るなんて。きっとこの雨は亡くなった親友の涙ね」
ということを呟き、生徒会長が、「神様が魔法をかけたみたい」とか言うんだと思います。
(どっちにせよ、どうでもよいのですがね、……)。
多分、この時期に好んで読んでいた樋口有介の『たぶん、彼女は魔法をつかう』あたりの影響だったのでしょうね(笑)
【追記終了】

うわ、なんだ、これ、というお話だったような…。

一人暮らししているといらんことばかり考えていたのですね。
まあ、棒にも橋にもかからずではありましたけれど……。

 

その後、社会に出てからはすっかりコバルト文庫ともご無沙汰してしまっておりましたが、同僚の作った『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』を契機として、認めた赤面必至の思い出とともに、まだまだ読んでいない作品に手を伸ばしてみようと思います。

 

『コバルト文庫で辿る少女小説変遷史』という本は、自分の思い出に向かわせてくれる、不思議な不思議な一冊です。

みなさまの思い出も、ぜひ聞かせてくださいね(笑)!!

それから、コバルト出身の立原透耶先生の著作集も現在第2巻まで出ております。こちらもどうぞよろしくお願い致します〜!

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(小鳥遊)