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インターンについて私が知っている二、三の事柄

足かけ二年になるか。八月から来社する二名を加え、のべ八名の「インターン」の大学院生を迎えることになった。

弊社と著者・訳者としての一橋大学の諸先生方との関係もあって、一橋大学大学院言語社会研究科の尾方(一郎)先生、武村(知子)先生が来社され、希望する大学院生の「《出版》について学ぶインターン」の面倒をみてほしいということだった。

小さな版元である弊社であれば、主要業務の「編集」「営業」「製作」をはじめ、企画・立案から本ができあがるまで、おおよそひととおりを経験することができる。

ふたりの先生がお越しになられた際、分厚い紀要論文集『言語社会(2)――特集・人文無双/天地の間をかけめぐれ』(二〇〇八年三月三十一日刊)をいただいたのだが、ずしりと重い本を手にして驚いた。印刷から造本まで、編集製作にたずさわった方々の細部へのこだわりが尋常ではないと感じた。なにせ印刷・製本があの精興社で、本文用紙・付物用紙の選別から、印刷用インクは特製という。また、本文中には刊行までの製作プロセスについての精興社の方々へのインタビューが三本(「①伝統とは常に新しいことである」「②電子と紙」「③技術と人を繋ぐ現場で」)も掲載されるという念の入りよう。

そして圧巻は、本書巻頭におかれた武村氏によるマニフェスト的「解題」だった。こんなに「編集」や「本づくり」への意識・関心が高い大学の研究者というのは稀有ではないか。

「言社研は傾かなくてはならない! 世の中が激しく傾いているのだから、人文学も過激に傾き、言社研も果敢に傾くのでなくては、何も確実なことが生じない。……言社研はもちろん、人文学とは何かという問いさえ、実はどうでもよいのに違いない、大事なのは当座、人よりも言語であり、言語において在るところの人である。人とは何かという問いがさらにその先の彼方にあって星のように光っているが、とうに死んでいるのかもしれない星の光を光と見るのもまた人とその言語でしかない」

「これは本気だな」と痛感。「インターンの件、お引き受けいたします」と返答するよりなかった。

ともあれ「出版」にかんするインターンなんて、自身が経験したこともないのにどうすればよいやら……懊悩するなか、とにもかくにも社内(社長及び編集・営業)はもとより、他の版元や編集プロダクションの経営者、業界紙編集長、ブックデザイナー等、出版界の先輩、友人知人に協力を要請し、なんとかインターンのみなさんには出版をめぐってさまざま角度から経験してもらうことができた(とはいえ勉強になったのはコーディネーターであるはずの愚生である)。その後も「言社研」からのインターン受け入れの要請は続いている。ということは、ひとまずは愚生の差配が奏功しているといっていいのだろう。

いずれにせよ、夏とともにインターンの院生たちと一緒に学ぶ時季がやってきた。

「出版ニュース」(2016年8月中旬号より一部改稿のうえ転載)

[筆・南葵亭樂鈷]