イケ彩ダメ彩

最新の記事5件

このコーナー内を検索

月別一覧

「本づくり」をめぐる疑問と不安を共有する(Full Version)

「編集という仕事には決まった方法がないんですよ。長年やってきて、つくづくそう思います。一〇〇人の編集者がいたら、一〇〇通りのやり方がある。教科書で学ぶようなものじゃない。実際、小学館に入っても特に何か教育されたわけじゃなく、周りの仕事を見たり聞いたりしているうちに、自分の方法ができたんですね」とは、かつて『成りあがり』や『日本国憲法』等の大ヒットを飛ばした編集者・島本脩二氏のコメント(「産経新聞」二〇一七年八月十八日)である。まさにとおり。大先輩が言うのだから間違いない。

昨年度、出版協では、合同出版・上野良治氏を講師として「編集連続講座(全6回)」を開催した。このレクチャーでは、「本づくりのルール」「増刷の決定」「原稿整理の基準」「原価率の設定」「実売部数・返品率の管理」「編集者の能力」等、現場からの「生」のデータと経験に基づいたテーマ設定ということもあって多くの受講者が参加し、活発な議論及び意見の交換がなされたのだった。

参加者の年齢も多様で、ヴェテラン編集者といっていい方も参加されていたのだが、やはり編集者・出版人を何年やっても本づくりと販売の「不安」と「疑問」はついてまわるものであり、講座での質疑応答、その後の懇親会でのざっくばらんなフリートークでは老若男女を問わず、侃々諤々、口角泡を飛ばし夜が更けるのを忘れ、終電の時刻を多少は気にしながら毎回盛会となった。

そういったことを踏まえ今年度は上野氏を座長に、そのレクチャーのスピンオフ的企画「編集研修オフ会」を開催することとなった。いわゆる「講座」では、若い編集者・出版関係者が時間をかけた議論ができないのではないかという危惧もあって、気軽な「オフ会」の実現となったのである。

この会を開くにあたって、事前に若い編集者の方々に聞き取り調査をしてみてわかったことだが、自身が身を置く社内の先輩諸兄姉にはかえって訊きにくいことがあるようで、他社の方との意見交換ができるのであればそのような会にはぜひ参加したいという意見が多かったのである。

そうなれば「善は急げ」というわけで、四月から市ヶ谷駅前にある喫茶店の会議室にて、夕刻より約二時間のフリーディスカッションを行っている。これまでの三回のオフ会での議題として提出されたテーマは次のとおり。

「装丁とデザイン」(G社・S氏)では、気になる他社本を例示しながら、いかに製作コストを抑制しながら希望の書籍をつくることができるかを検討。「印税のこと」(T社・S氏)では、各社の印税率の根拠について議論。「出版社のHP」(G社・Y氏)では、どのように見せれば本が売れるようになるか各社のHPを比較しながら最良のウェブサイトの製作を検討。「翻訳書の版権」(S社・I氏)では、版権を取得する際の心得等、初期費用がかかるわりになかなかコストが回収できない翻訳書の現況について議論。「編集者の生活」(H社・I氏)では、編集者は日々をいかに過ごせば「より良い企画」を立案することができるのかを議論。「出版企画の実現」(N社・Y氏)では、具体的な書籍企画を俎上にのせ、それをカタチにするためにはどのような線引きを考えればよいか、参加者それぞれの立場で厳格に検討。毎回、それぞれの若き編集者たちがすぐにでもベストな「解答」がほしいといった感じの熱いブレスト的ディスカッションとなったのであった。

かつて映画監督・土本典昭氏は「映画は、考えるための道具である」と言った。私は「本は、考えるための道具である」とパラフレーズする。「映画」と「本」に通底する「鍵」は「編集」なのだ。

[筆・南葵亭樂鈷]