少し怪しげで猥雑な雰囲気と独特な人情…。その“残り香”を淡々と低い目線で、さり気なく、にじみ撮りとでもいえるような優しいふれ合い写真集。収録148点。浅草寺/浅草六区/三社祭/商店主/芸者衆/旅芸人/露天商…。
(社)日本図書館協会 選定図書
1931年 東京生まれ
1991年3月まで時事通信社写真部に勤務
日本写真協会会員JCIIフォトクリニック講師 八王子写真塾塾長
主な受賞
1969年 カメラ毎日年度賞
1971年 アサヒカメラ年度賞
1972年 アサヒカメラ年度賞
1974年 アサヒカメラ年度賞
1975年 アサヒカメラ年度賞
その他受賞多数
東京都'・パリ姉妹都市提携記念写真展に作品1点が選抜され横浜ギャラリーの永久収蔵作品となる
写真展・個展
1978年「阿姿」ミノルタフォトスベース新宿
1982年「東京人間模様」ニコンサロン新宿
1985年「ある日の風貌」ミノルタフォトスベース新宿
1994年『海を渡ると一人間模様」ミノルタフォトスベース新宿
2000年「ポルトガル見聞録」ミノルタフォトスペース新宿
2006年『遥かなる佃」JCIIフォトサロン
2008年「工部川崎とこども達」アートガーデンかわさき
元『アサヒカメラ』編集長。著書等に『なぜ撮るか—現代写真家の宿命的モチーフ』(山と溪谷社、1986)、『映像にみる昭和—社会写評 くもん選書』(くもん出版、1989)、『写真へのメッセージ』(山と渓谷社、1993)、『瞬間伝説—すげえ写真家がやって来た』(KKベストセラーズ、1994)、『母の初恋 』(清水弘文堂書房、1995)、『戦後50年横浜再現—二人で写した敗戦ストーリー』奥村 泰宏・常盤 とよ子・岡井 耀毅 共著、平凡社、1996)、『瞬間伝説—歴史を刻んだ写真家たち (文庫) 』(朝日新聞社、1998)、『評伝 林忠彦—時代の風景』(朝日新聞社、2000)、『写真連想小説 ラクチョウの記憶』(海拓舎、2001) 、『土門拳の格闘』(成甲書房、2005)、『肉声の昭和写真家―12人の巨匠が語る作品と時代 平凡社新書』(平凡社、2008)、『昭和写真劇場』(成甲書房、2008)などがある。
●浅草寺 ●仲見世 ●神谷バー
●花やしき ●はとバス ●浅草六区
●三社祭 ●ほおずき市 ●酉の市
●羽子板市 ●職人 ●商店主
●芸者衆 ●旅芸人 ●露天商
●易占い ●傷痍軍人 ●ラオ屋 ●見せ物小屋の蛇女 ●猿回し
●飴細工 ●サンバカーニバル
次 序─────────────篠野志郎
石の来歴(写真解説) ───────篠野志郎
序 失われた足跡
一 楽園を離れて
二 石の変容
三 複合化する空間
四 越境する空間
五 東アナトリアの歴史建築
跋 時の翼に乗って
遺構所在地図・遺構索引─────守田正志
王都アニの建築─────────藤田康仁
一 失われた都市
二 アニ文化圏の中・後期アルメニア建築の概要
三 アニ文化圏の中・後期アルメニア建築の特質
墓廟建築にみる建築技術の伝播──守田正志
一 中世のアナトリアにおけるイスラーム
二 アナトリアの墓廟建築研究の史的意義
三 工法にみる墓廟建築の分布
四 架構構成にみる墓廟建築の分布
五 外来と土着の建築技術の融合
用語解説・解説図版───────藤田康仁
解 題─────────────黒津高行 解題『東アナトリアの歴史建築』 黒津高行
本書は、東アナトリア地域に残された多様な歴史建築を、12年にわたる研究成果を踏まえて紹介した写真集である。2007年に刊行した写真集『Out of the Frame──アルメニア共和国の建築と風土』の続編にあたる。まさに本書の書き出しは、前書の「おわりに──into the Frame」で記した2005年12月のアルメニア訪問の場面から再び語られてゆく。
本書に収録された美しい写真は、著者が建築遺構の撮影をとおして過去と対峙して切り取った記録である。建設者たちよりも長生きしてきた建築物には分厚い「過去の知識」が蓄えられている。著者から提示された建築写真を前にした読者は、おそらく時間の重みを感じることになるであろう。これらの建築が何を語りかけているのか、そのことを直ちに読み取ることはできないが、頁を開く度に、東アナトリアの歴史建築の現在とその魅力の何かがずっしりと伝わってくるに違いない。建築写真集という性格上、かちっとした誌面構成になっているが、時折差し込まれた風景と人物の写真が読者をほっとさせてくれる。そして、かつて独自の建築空間を創造した当時の人々の願いと、それを育んだ広大な大地に、またそうした空間と共に送られる生活に思いを巡らせることができるかも知れない。
著者によれば、地中海・黒海・カスピ海に囲まれたアナトリア・カフカース・シリアの各地域には、独自の建築文化が開花したという。とりわけ、五世紀から一四世紀にかけては、アナトリア中部の初期キリスト教およびビザンツ教会の建築、北シリアの初期キリスト教建築、東アナトリアからカフカース一帯に分布するアルメニア教会およびグルジア教会の建築、アナトリアに広く分布するセルジューク朝期のイスラーム建築など、多様な建築形式が展開した。キリスト教の歴史建築だけでも六〇〇棟を超える遺構が残されている。
著者は、1998年からアルメニア教会建築を対象に悉皆調査を開始し、建築技術の側面から東アナトリアにおける各建築群の建築的特質とその展開を明らかにしてきた。そして、調査対象をアナトリア高地全域に拡張し、これまで西欧建築史の文脈の中で捉えられてきたこの地域の建築文化を再評価し、史的位置づけを試みようとしている。本書は、こうした研究蓄積の中から生まれた。ここでは、2006年から2008年の3年間に調査した東トルコに散在するキリスト教・イスラーム教の建築遺構を中心に紹介しており、翼畠な写真と建築解説をとおして、失われつつある東アナトリアの多様な歴史建築の様態を炙り出してみせる。さらに、2009年のシリアでの調査成果も盛り込み、キリスト教建築を生み出した最初期の建築形態を読み解いている。
本書は、「石の来歴」と題した序と後書きを含む五章構成で、巻末に調査の中心メンバーである藤田康仁と守田正念による論考を収録する。
(中略)
本書は、写真集の体裁をとっているが、解説の内容は深く、東アナトリアの歴史建築の系譜をダイナミックに論述し通史でもある。かつてギリシャのアトス山に滞在して修道院建築遺構を調査した著者の、熱い思いが伝わってくる。つまり、五官で実物と向き合う重要性、海外の建築に漂う立ち位置、学術論文では表現できない建築史学研究の面白さを伝えようとしたのではないか。近年、建築史学の分野でもアジア圏を除けば、海外の古い建築を研究する学徒は減少の傾向にあり、本書がそうし風潮に一石を投じるものであることは間違いない。建築史学が美術史や歴史学とどう異なるのか、本書が提起している問題は、今後、工学部建築学科の中に籍を置く建築史学の発展を考える上で、避けては通れない答えを求められる問でもある。その問に対して、著者は何よりも、建築史学を社会に対して開くことの必要性を、主張しているように思えてならない。その試みの一つが本書ではなかったか。あえてガチガチの学術的な体裁を捨てた本書の構成や記述が、それを物語っているように思えるのである。一般読者を含めた知的世界の構築、幾らか学術的な若手の論考を含めて、著者はそうし議論の場を社会に提供したかったのではないだろうか。
本書は、日本ではこれまで紹介されることの無かった貴重な建築記録であり、学術資料としての価値は高い。建築歴史、意匠関連の専門家ばかりでなく、建築文化に関心をよせる一般読者の期待にも応えてくれる一冊といえよう。
(社)日本図書館協会 選定図書
東アナトリアに遺るキリスト教・イスラーム教の歴史建築の全貌! 約400点
五世紀の柱上苦行僧・聖シメオンが最期に目にしたヴィジョンとは?
東アナトリアの荒野に漂着した「石の方舟」が忘却の淵から謳い上げる豊饒なカンタータ
パレスチナに生まれたキリスト教は西欧に布教され、強大な教会権力を生み出した。その権力機構のもとで、西欧の各地に壮麗な教会堂が建設された。……しかし、その信仰はシリアを経由して東アナトリアにも伝えられた。そこで広まったキリスト教は、アルメニア教会、グルジア教会(後にビザンツ教会に復帰)、或いは単性派教会にみられるように、五世紀のカルケドンの公会議で異端として退けられながらも、そこに住む人々の信仰を獲得していった。東アナトリアに広まったキリスト教では、史料の多くは失われ、祈りを捧げた人々のほとんどは記録を残す事もなく、歴史の彼方へと消えていった。だが、祈りを捧げた空間は、雄弁に彼らの存在を語っている。……
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